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「長期被曝」と「退避」についての考え方

2011-04-12 13:16:08 | 政治
20km圏外でも場所によっては避難エリアに指定される件について、議論が混乱しないように、話を整理しておく必要がある。

まず、今回の避難は「長期被爆」を懸念してのことだ。
今、飯舘村に行ったとしても、放射線量は既に短期的な被曝を気にする必要がない程度に落ちている。
では「長期被曝」とは何か。

原発事故後の長期被曝とは、長寿命放射性核種で汚染された地域に人々が継続して生活している状況での被爆のことで、この被爆は、適切な防護措置を実施することで線量を低減できる被爆である。

原子力緊急事態時の長期被ばく状況における放射線防護の実施と課題(日本原子力研究開発機構 安全研究センター 原子力エネルギー関連施設安全評価研究ユニット)
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Review-2010-022.pdf

まず、基本的な考え方としては下記がある。


長期被ばく状況での防護措置の導入においては、放射線による健康影響だけではなく社会的・経済的な補償に関する判断を含む多様な観点が混在しているため、状況の正確な記述と適切な対応が困難な状況である。このような状況での判断は、必ずしも科学的及び数量的な根拠だけで正当化することができない。これを正当化する一つの方法として、多様な利害関係者の合意に基づく手続き的な方法が考えられる。


「必ずしも科学的及び数量的な根拠だけで正当化することができない。」
「これを正当化する一つの方法として、多様な利害関係者の合意に基づく手続き的な方法が考えられる。」

このあたりの考え方については、当ブログの『相変わらず人の心を掴む事ができない民主党政府』あたりも参照して欲しい。

次に、あえて語るまでもないが「放射線防護の目的」については下記がある。


3. 長期的な放射線防護措置とその判断基準

3.1. 放射線防護措置の目的

原子力及び放射線緊急事態における防護措置の基本的な目的は、短時間で高線量に達するような厳しい線量率に曝されている個人の確定的影響の防止と、より低い線量率で生ずる確率的影響を可能な限り低くすることである。また、被ばくが長期にわたって継続する場合には社会活動や経済活動の常態への復帰も防護措置の目的の一部である(Hedemann, 2002)...


では、放射線を防護するとして、どのような方法があるだろうか。


3.2. 長期的な放射線防護措置の種類

原子力事故後の時間区分は、事故の発生から放射性物質の放出までの期間、放射性物質の放出から数日程度の期間、及び数週間後以降の期間に分けられる。長期被ばく状況とはこのうち事故から数週間以降の期間のことである。この段階での被ばく経路は、主に、地表面沈着核種による外部被ばく、汚染食物の経口摂取による内部被ばくに加え、地表面から大気中への再浮遊核種の吸入による内部被ばくも含まれている。これらの被ばく経路に対する防護措置には、個人に対して介入することで被ばくを防ぐもの(移転、立入制限)と線源や被ばく経路への措置により被ばくを防ぐもの(除染、飲食物摂取制限)がある。...

(1) 移転
移転とは、地表面に沈着した放射性物質による被ばくを回避するために、汚染地域の住民を非汚染地域へ移動させることである。移転と避難は同様の措置であるが、事故後の導入時期及び退避期間が異なるので、基本的に両者は異なる防護措置である。避難の場合、住民は宿泊施設や学校等の公共施設に一時的に数日間滞在するのみであるが、移転の場合、汚染地域への復帰まで数ヶ月から数年を要する。また、生涯に予想される線量によっては永年的な移転も選択肢の一つとして考えられる。移転には高い放射線回避効果を期待できるが、個人の日常生活や共同体での活動が断絶してしまうため社会的・経済的な混乱や心的なストレスを引き起こす可能性もある。

(2) 汚染地域の除染
汚染地域の除染は、一般的に浄化作業が終了すれば徐々に活動を再開できるため、地域を長期間閉鎖する立入制限や移転よりも混乱の少ない措置である。除染の目的は、汚染された土壌からの被ばくの低減、人や動物への放射性物質の移行の低減、放射性物質の再浮遊や汚染が拡大する可能性の低減である。特に、特定の社会基盤を利用する人々や汚染地域の作業者に関して比較的大きな被ばく低減効果を期待できる。

(3) 飲食物摂取制限・農業対策
事故で環境中に放出された放射性物質が飲食物に移行し、これを摂取することで内部被ばくをもたらす可能性がある。この被ばく経路に対する措置としては、汚染された飲食物の摂取を直接制限する飲食物摂取制限と、汚染された空気、土壌および飲料水から放射性物質が食物連鎖を通して移行することを制限する農業対策などがある。飲食物摂取制限は各食品に対する介入レベルを設けて汚染食品の流通や消費を禁止することで達成できるが、代替食品の供給、加工品や原材料のモニタリング、汚染食品の処分、食品生産者に対する補償等、費用を要する措置である。...


「移転」「汚染地域の除染」「飲食物摂取制限・農業対策」を組み合わせて対応していく必要があるが、先述したように「多様な利害関係者の合意に基づく手続き的な方法」を模索しなければならない。一人ひとりの都合を聞くまでする必要はないが、少なくても一人ひとりに経済的損失のない形での選択肢が与えられなければならない。

そして、政府が介入する程度の話は下記。


3.3. 放射線防護対策の計画と実施

...

3.3.3. 個々の防護措置に関する介入レベル

... ICRP は、Publication 63 の中で約 1 Sv という平均回避線量が移転に対してほとんどいつでも正当とされるレベルとして利用可能であろうと述べている(ICRP, 1991b)。この考え方の根拠については特に述べていないものの、Publication 60(ICRP, 1991a)による職業人の線量限度が 5 年で 100mSv であることを考慮すれば、生涯約 1 Sv の回避線量は生涯を 50 年とした場合の職業人の線量限度に相当し、リスクの観点から移転をほとんど常に正当とするレベルであることは理解できる。しかし、もっと低いレベルでも正当とされる場合もあるだろうし、非常に重大な事故の場合にはこのレベルよりさらに高くなるかもしれないとして、明確な指針は示されていない。移転を含む長期の対策を必要とする状況はきわめて多様であり、事故後の状況を評価できるようになった段階で利用可能な選択肢の中から最良のものを選ぶことが望ましい。しかし、公衆への情報提供と助言が遅れると不安の原因となるので、事前に指針の要綱を作成しておく必要がある。...


「移転を含む長期の対策を必要とする状況はきわめて多様であり、事故後の状況を評価できるようになった段階で利用可能な選択肢の中から最良のものを選ぶことが望ましい。」
「しかし、公衆への情報提供と助言が遅れると不安の原因となるので、事前に指針の要綱を作成しておく必要がある。」

対応が後手に回ってしまい、不安を増大させてしまったことが今回の最大の問題であろう。


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