産経新聞が行った日本の主要企業125社のアンケートで現時点で原発の必要性を否定したのはわずかに5%だった。これに対して7割が再稼働の必要性を認めたという。少し前の読売新聞のアンケートでも同様の結果だった。
最近毎週金曜日に行われている脱原発デモは「再稼働反対」の大合唱であるが、朝日、東京新聞などのメディアが「国民の自発的意思の表明、このうねりは民意の反映」と賞賛したのとは対照的だ。
どちらが民意なのか、おそらく両方といえるだろう。たとえば、一人の主婦がデモに参加したとする。しかしその夫は、企業の正社員として勤務しているかもしれない。その企業は節電に悪戦苦闘し本音では原発再稼働を望んでいることも十分考えられる。
国民各人がおかれている状況で考え方も違う。脱原発デモでよく見かける高齢者も持ち家で当面の年金で生活を工面できる比較的恵まれた立場ともいえる。非正規で定職もままならない人がどれだけデモに参加しているのか。
政府が将来のエネルギー問題について、国民の意見を聞く公聴会で果たして、「民意」を吸収できるだろうか。そもそも最大公約数的な国民の総意などありえるのだろうか。公聴会をみる限り、どうしても一部の意見、それも脱原発を叫ぶ人々に占拠されている印象が強く、会議そのものに疑問を感じてしまう。
政府は当初これまでの公聴会から今後のエネルギー問題で結論を出すとしていたが、どうも先延ばしになりそうだ。これも致し方ないだろう。結局「民意」など探り出せなかったのだから。
政府は民意などというファジーな声に惑われることなく、専門家の意見を尊重しながら国家の指針とすべきものを大局的な見地で決定すべきだろう。