青い眼をした、かわいいかわいい婚約者が札幌でJLPTを受けている間
4年ぶりに、地球彫刻的モエレ沼公園に行ってみる。
思い出の中の薄暗い曇り空のモエレ沼公園と寸分違わず
やはりどんよりとぬる寒かった。
イサム・ノグチ風にまた吹いてもらえるかと淡い期待をしていたけれど
準備している頬には何も吹かなかった。
JLPTの試験時間が終わるまでに残された滞在時間は
2時間。
弾丸散歩。
腕立て伏せをしてた自転車置き場の連中は撤去されていた。
そのひとに教えてあげたい。
ひとつひとつのオブジェを眺めて
4年前のそのひととの会話を思い出して追憶に溺れるのは面倒くさくなったので
手っ取り早くレストランに入った。
入った瞬間に、ランチの値段と同じくらい入るのを躊躇させるように
ギャルソンがやってきて
「フランス料理のコースですがよろしいですか」と訊かれた。
居心地が悪い。
ジーパンと虹色パーカー。
しばらく待たされてから通された席は
大きく開いた窓側の一等のような席で余計居心地が悪い。
ランチを注文して
目の前にある黒い森と薄暗い空を眺めながら
ひとつひとつがいろんな味を発しておもしろい料理を
青い眼をした、かわいいかわいい婚約者と来れたらよかったなと思いながら
パクパクと口に運んでいるとさきほどの無愛想なギャルソンが
「ご旅行ですか、
今日はあいにく天気があまりよくなくて」と愛想よく話しかけてきた。
4年前の記憶を思い出して
「この時期の北海道はいつもこんな天気だと思ってたので
もともとあまり期待してませんでした」
というと
「そんなこともないんですけどね」とギャルソンは去っていった。
フランス料理に縁もゆかりもないあたしには
器だったり、奇妙で実用的ではないように見える形の、
つい写真を撮りたくなるような愉快なフォークやナイフを見つめながら
刻々と同じ表情をしてる曇り空に目をやりながら
4年前のそのひととの思い出の場所に結婚するちょっと前に来てしまうなんて
ブルーにならなくて少々心配していたけれど
これぞマリッジブルーらしいマリッジブルーだなと思った。
さきほどのギャルソンは料理を運んでくるたびに
何かしら話をふってくるよになった。
北海道出身という彼はどんな人生を送っているのだろうと想像する。
休みの日には何をしてるのだろう。
結婚前のラストスパートのように
小さい恋をする。
この雄大で閉鎖的なモエレ沼公園の四季の移り変わりを眺めながら
こうやっていろんな思いを抱えた、いろんな旅人の、いろんな思惑の傍らに
ギャルソンは深入りせずに佇むだけなのだろう。
深入りしたい。
お会計のときに、
お愛想程度に「また来てみてくださいね」と送り出してくれたので
「いつぐらいがおすすめですか」と訊くと
「暑いのはあまり好きでないですか」と訊かれたので
「寒いよりは」と言うと
「では夏がおすすめです
夏はすぐに予約でいっぱいになってしまいますので、お早目にご予約を」とギャルソン。
小さい恋の終わりだった。
試験を時間余裕でクリアした青い眼をした、かわいいかわいい婚約者が
待ち合わせしたサブウェイの前で
きょろきょろしながら
あたしを待っているのを見つけてほっとした。
青い眼をした、かわいいかわいい婚約者のことを想像するだけで
顔がにやけて、温かいものが身体の中を通過する。
目の前にいる大好きで大好きなひとと結婚するんだと実感のない実感をする。
4年ぶりに、地球彫刻的モエレ沼公園に行ってみる。
思い出の中の薄暗い曇り空のモエレ沼公園と寸分違わず
やはりどんよりとぬる寒かった。
イサム・ノグチ風にまた吹いてもらえるかと淡い期待をしていたけれど
準備している頬には何も吹かなかった。
JLPTの試験時間が終わるまでに残された滞在時間は
2時間。
弾丸散歩。
腕立て伏せをしてた自転車置き場の連中は撤去されていた。
そのひとに教えてあげたい。
ひとつひとつのオブジェを眺めて
4年前のそのひととの会話を思い出して追憶に溺れるのは面倒くさくなったので
手っ取り早くレストランに入った。
入った瞬間に、ランチの値段と同じくらい入るのを躊躇させるように
ギャルソンがやってきて
「フランス料理のコースですがよろしいですか」と訊かれた。
居心地が悪い。
ジーパンと虹色パーカー。
しばらく待たされてから通された席は
大きく開いた窓側の一等のような席で余計居心地が悪い。
ランチを注文して
目の前にある黒い森と薄暗い空を眺めながら
ひとつひとつがいろんな味を発しておもしろい料理を
青い眼をした、かわいいかわいい婚約者と来れたらよかったなと思いながら
パクパクと口に運んでいるとさきほどの無愛想なギャルソンが
「ご旅行ですか、
今日はあいにく天気があまりよくなくて」と愛想よく話しかけてきた。
4年前の記憶を思い出して
「この時期の北海道はいつもこんな天気だと思ってたので
もともとあまり期待してませんでした」
というと
「そんなこともないんですけどね」とギャルソンは去っていった。
フランス料理に縁もゆかりもないあたしには
器だったり、奇妙で実用的ではないように見える形の、
つい写真を撮りたくなるような愉快なフォークやナイフを見つめながら
刻々と同じ表情をしてる曇り空に目をやりながら
4年前のそのひととの思い出の場所に結婚するちょっと前に来てしまうなんて
ブルーにならなくて少々心配していたけれど
これぞマリッジブルーらしいマリッジブルーだなと思った。
さきほどのギャルソンは料理を運んでくるたびに
何かしら話をふってくるよになった。
北海道出身という彼はどんな人生を送っているのだろうと想像する。
休みの日には何をしてるのだろう。
結婚前のラストスパートのように
小さい恋をする。
この雄大で閉鎖的なモエレ沼公園の四季の移り変わりを眺めながら
こうやっていろんな思いを抱えた、いろんな旅人の、いろんな思惑の傍らに
ギャルソンは深入りせずに佇むだけなのだろう。
深入りしたい。
お会計のときに、
お愛想程度に「また来てみてくださいね」と送り出してくれたので
「いつぐらいがおすすめですか」と訊くと
「暑いのはあまり好きでないですか」と訊かれたので
「寒いよりは」と言うと
「では夏がおすすめです
夏はすぐに予約でいっぱいになってしまいますので、お早目にご予約を」とギャルソン。
小さい恋の終わりだった。
試験を時間余裕でクリアした青い眼をした、かわいいかわいい婚約者が
待ち合わせしたサブウェイの前で
きょろきょろしながら
あたしを待っているのを見つけてほっとした。
青い眼をした、かわいいかわいい婚約者のことを想像するだけで
顔がにやけて、温かいものが身体の中を通過する。
目の前にいる大好きで大好きなひとと結婚するんだと実感のない実感をする。