G「ボブ・ホウイは、19世紀後半に誕生し、20世紀を通じて世界の政治経済を撹乱しつづけた妖怪は、『共産主義』と『中央銀行主義』の二匹だと主張しています。
『共産主義思想』のインチキ性はだれもが知るところとなり、『社会主義』圏は1980年代末に自然消滅しました。
しかし、はるかにしぶとく生き残り、今も世界中の人たちをたぶらかして国際経済・国際金融の混乱のもとであり続けている妖怪が、『中央銀行主義』なのです。
そもそも金融政策には抑制効果はあるが、刺激効果はないのです。
『ヒモで人を引っ張ることによって行きたいところに行かせないことはできるが、ヒモを押しても本人が行きたがらないところに行かすことはできない。』という単純な真理があります。」
A「うーん。 そうですね。
『ロバを水辺に連れて行ったとしても、そのロバの喉が渇いていれば水を飲むが、水腹を抱えたロバはそれ以上水を飲まない。』という事ですよね。」
G「そうなのですよ。
つまり、金融政策というのは過熱を抑える効果はあるが、冷え込んだ景気を活気づける効果はもともと持ち合わせていないのです。
そして、ここが重要な所だが、過去の大恐慌期にも一貫して『金利を下げ、マネーサプライを増やす』という中央銀行主義者たちが推奨する不況対策は、全然効果がなかったのですよ。
20~25年の長い長い『癒し』の期間をへて信用が再建されるのを待つという、マスコミには『無為無策』としてさんざん叩かれる『自然治癒』策をとるか、大戦争を引き起こして人為的な需要激増策をとるかしか、有効な大恐慌対策はないのですよ。」
A「うーん。 そうなのでしょうか?
しかし、新生アメリカと、大きな期待のかかるオバマ大統領は、思い切った財政出動と大幅な金融緩和で今次経済危機を乗り切ろうとしているではありませんか?」
「ほーう、そうなのですか?
けれども、(『過去の経済学』の奴隷=知的エリートの)中央銀行だけではなく、オバマ大統領はじめ政治家、官僚、マスコミが一体となって大恐慌・大不況には金融政策は『無力』だという真理を押し隠そうとするのです。
もし、金融政策は本当に必要とされる時には『無力』で、自然治癒を待つのが一番被害の少ない賢明な政策だということがばれてしまったら、『エリートが大衆を支配していたほうが、大衆が自分で物事を決めるより幸せになれる。』という大ウソをつき続けることができなくなるからなのですよ。」
A「えーっ。 何ですかそれは?
『チェンジ』の黒人大統領を選ぶ『柔軟性』をもつアメリカだけでなく、日本の民主党政権も追加補正予算や大幅な金融緩和策を打っているではありませんか?」
G「ほーう、そうですか?
そのように、エリート社会の構成員たちはグルになって、『中央銀行主義は間違っていない。 前回の大恐慌の時に失敗したのは、たまたま当時の中央銀行当事者が正しい政策をとらなかったからだ。』という歴史の捏造(プロクルテレスの寝台)をするのです。
1929年の大恐慌が古典的な事例です。
当時できたばかりのアメリカ連邦準備制度の中核を担っていたニューヨーク連銀幹部たちは、自分たちが許された権限の<6倍>に当たる買いオペを実施して、マネーサプライの大激増を目指しました。
つまり、金融政策の教科書どおりに模範解答を出したのです。
だが、それだけのマネーサプライ激増策でさえ、何の効果も発揮しなかったのです。」
A「ふーん。 そうですね。
そういえば、大恐慌から大不況期の金融政策を解説した経済史の論文・書籍には、そんな歴然たる事実さえ書かれていませんね。」
G「そうなのです。
ほとんど例外なく『連銀が大胆な金融緩和に踏み出すのが遅すぎたから、ふつうのパニックにとどまるはずだった1929年の大恐慌が、1930年代を通じた大不況に発展してしまった。』と書かれています。
あるいは、世界を大不況から救った救世主だったはずのフランクリン・D・ローズベェルト(オバマ)大統領が圧倒的な支持を得てやりたい放題に場当たり的な政策を乱発し、その間連銀と連邦準備制度(バーナンキ)は忠実に金融緩和を続けていた1937年の株価大暴落とあらゆる経済指標の底割れも、ほとんど無視されているのです。
中央銀行主義者(知的エリート)にとっては説明のしようがない事実だからなのです。
まさに、知識人たちが自分たちにとって都合が悪い事実はなかったことにしてしまう傾向(プロクルテレスの寝台)がむき出しになった事例ですね。」
A「うーむ。
金融政策に景気喚起効果がないのは、『水腹を抱えたロバは、水を飲まない』という真理からも、論理的に考えれば誰(大衆)でもわかる当たり前のことですね。」
G「ここら辺のところは、『経済政策の万能神話』(P4)、『経済政策の四つの虚実』(P5)で、すでに話したことですね。」
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