おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「落語鑑賞教室」その17。八代目桂文楽「明烏」。

2021-08-31 19:20:43 | 落語の世界

 八代目文楽師匠は、上品な色気ときっちりした芸が売りもので、特にこの“明烏”は得意中の得意なだし物。

気が弱く女の扱いがわからない若旦那、時次郎と吉原に誘う札付きの遊び人源兵衛と太助の二人の会話も小気味よいテンポで進む。

これは有名な話ですが、甘納豆を食べる仕草が絶妙で、この噺を聞いた後で、甘納豆がよく売れたとか。

磨きぬかれた芸は何度聞いても飽きない。完成度の高い芸となっています。

前にも紹介しましたが、文楽師匠の最後の高座。噺の途中で登場人物の名前を忘れてしまい「また勉強して参ります」と言って高座をおり、そのまま二度と高座にあがることはなく、その後、しばらくして亡くなりました。

文楽師匠は、上野の黒門町という所に住んでいたので、今でも「黒門町の師匠」と言えばこの人の事です。

さて、お噺は、

日本橋田所町三丁目、日向屋半兵衛のせがれ時次郎。19才。勉強ばかりして青い顔して部屋に閉じこもってばかり。

今日もお稲荷さまの参詣で赤飯を三膳ごちそうになってきたと、おやじの半兵衛に報告する。おやじは跡継ぎとしてこれからの世間付き合いができるだろうか、と心配だ。


すると、町内きっての札付きの遊び人、源兵衛と多助にお稲荷さんのお籠もりに行こうと誘われたことを父親に報告する。どこにあるかと聞くと、何でも浅草の観音様の裏手にあってけっこう繁昌している、と。これは、もちろん吉原のこと。
本人には、お賽銭が少ないとご利益がないから、向こうへ着いたら費用はおまえが全部払ってしまえと送り出す。

       

時次郎を待つ二人の会話も実に面白い。親から頼まれたいきさつを話したり、・・・。

大勢の人で賑わう吉原に着くと、あそこの見返り柳の下で待ってますから、と時次郎。

大門をくぐって吉原遊郭へ入った時次郎、お茶屋まではよかったが、大見世に入れば花魁・遊女たちが廊下をカランコロンと歩いている。いくら初心(うぶ)でも、ここがどこで、何をする所くらいは知っている時次郎。
 お稲荷さまとだましてこんな所へ連れて来られたと泣いて騒ぎ出し、帰るとだだをこねる。

源兵衛と太助は大門を三人で入ったのに、一人で出て行くと怪しいやつ思われて会所で留められ、縛られてしまうとおどして、やっと部屋に上がらせる。
 芸者連が来て賑やかな酒の座敷が始まるが、時次郎は隅で泣いている。あげくには「女郎なんか買うと瘡をかく」なんてことを言い出す始末。
 早いことお引けと、いやがる時次郎を敵娼(あいかた)の待つ部屋へ押し込む。時次郎の敵娼は十八になる浦里という絶世美女。初心な時次郎にこちらも積極的。連れの一人は、障子に穴を開けてのぞきこんだりする。

 明烏、一声鳴いて、夜が明ける。「振られた者の起し番」で、結局、敵娼に振られた源兵衛と太助は歯磨きをしながらぶつぶつ言う仕草も絶妙。甘納豆を口に放り込みながら、時次郎を起こしに来る。

      

           


照れているのか、布団にもぐったままの時次郎。

源兵衛「けっこうなお籠もりで。そろそろ帰るから、早く起きてください」

浦里も「若旦那、早く起きなんし」と声を掛ける。
時次郎「花魁は、口では起きろ起きろと言いますが、あたしの手をぐっと押さえて・・・・」と云う始末。

甘納豆を食べながら、ぶつくさ言う二人。
頭に来た太助、「じゃ、ゆっくり遊んでらっしゃい。あたしたちは横浜に行くので、先に帰りますから」

時次郎は、布団から顔を出し、「あなた方、先へ帰れるものなら帰ってごらんなさい。大門で留められるから」

        

※写真は、「youtube」より。

 

この舞台は?

「日本堤通り」をはさんで少しくねった道が「吉原」への道。手前の道路際に「見返り柳」。

見返り柳」。「吉原大門交差点」にあるガソリンスタンドの前。
「見返り柳の碑」。

 旧吉原遊郭の名所のひとつで、京都の島原遊郭の門口の柳を模したという。遊び帰りの客が後ろ髪を引かれる思いを抱きつつ、この柳のあたりで遊郭を振り返ったということから「見返り柳」の名があり、
 きぬぎぬのうしろ髪ひく柳かな
 見返れば意見か柳顔をうち

など、多くの川柳の題材となっている。
 かつては山谷堀脇の土手にあったが、道路や区画整理に伴い現在地に移され、また震災・戦災による焼失などによって、数代にわたり植え替えられている。      平成8年9月 台東区教育委員会


この奥に遊郭が広がっていた。

1880年代のようす。○が吉原。斜め右に「山谷堀」。

明烏」=夜明けがたに鳴く烏。また、その声。近世、男女の朝の別れの情緒を表現するのに用いられた。


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