おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「今昔物語いまむかし」(野口武彦)文藝春秋

2014-05-07 21:47:01 | 読書無限
 「羅生門」には梯子(階段)はなかった、という前提をもとに、芥川が描いた「羅生門」の(近代人的な)人物像、そして世界(観)を分析しながら、「今昔物語」が時代の流れと共にどう受容され、変形されてきたかを探っていきます。
 今昔物語の「いまむかし」を次々とてぎわよく料理しながらお話を進めていきます。
 語り口。切り口のひねり、切れ味、そして味付けして「かっこうな」料理として勧め方が、絶妙です。
 「業平」伝説、「鬼伝説」、「鼻」にまつわる(これも芥川にかかわって)話。
 趣向は、料理にはけっして適さない素材が多い。犬に食われる子供たち、汚物の「詩」学、笞を持つ女・・・、中古末期の猥雑で人間の素の生き様が如実に語られる「今昔」の世界から江戸文学、近代文学と自在な筆運びです。
 実は、まさに今の世がそうした混沌とした世の中の世相を再び現じているのではないか、との筆者の思いはどこにあるのでしょうか? 後期高齢者として、友人、知人が歯が欠けたように数が減っていく現実の中で。
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