おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

おばあさんと年老いた猫の話し

2005-03-06 23:03:58 | 世間世界
 近所の古びたアパートに一人暮らしのおばあさんがいます。猫好きなおばあさんは、近所にいる野良猫の世話をしています。自分の住む、アパートの階段の下の所に餌を置いているのです。
 でも、とても面倒見がよくて猫たちもよくなついています。あまり増えすぎるといけないので、猫たちに避妊手術をうけさせたりしています。これも、けっこうな金額をとられます。
 猫たちは、だんだん大きくなり、年数も経ってきました。年寄りの猫もいます。けれども、餌のときに近づくだけ、おばあさんもそれでよしとして、自分も身寄りがないせいか、猫たちをかわいがっています。
 昨年12月31日、東京地方に雪が降りました。とても寒い夜になりました。いつもは猫たちは軒下やどこかで寒さをしのいでいるのでしょう。おばあさんは、一番古い、もう20年近く面倒を見ていた猫のことがとても気になったそうです。
 最近姿を見かけないし、どうしたのだろう、死んでしまったのか。猫は死ぬときは、姿を隠すと言います、そうかもしれないと。
 それでも寒い冬の夜、おばあさんは、寒い戸外に出て猫たちを探しました。どこからともなくニャアという声がしました。見ると、その年取った猫でした。元気な頃は餌をやっても食べたら、人間に近づきもしない猫でした。それでも何となく気になって、何度か呼び寄せたら、何と近づいてきたのです。そこで、抱き上げました。
 もうすっかり衰えた様子でした。寒かろうと抱き上げたまま、家に入り、小さな段ボールに毛布を敷き、ホカロンを下に敷いて寝かせました。その猫は、小さな箱に入って体を丸めて静かに眠ってしまいました。
 翌朝、元旦。おばあさんが箱の中を見ると、猫は冷たくなっていました。死んでいたのです。年取った野良猫は、最後の最後に、おばあさんの手に抱えられ、暖かくなった、手作りの簡易ベッドで一生を終えました。
 人間の死に様もさまざまです。年取ってみんなに看取られて死ぬ人。誰にも看取られず、本当に孤独なままに死ぬ人。晩年は、人間も動物も皆同じだと思います。
 せめてやさしい肉親に看取られながら死ぬ、という境涯になりたいものです。これは、自分が願っていてそうなるのではないでしょう。いつもその人を陰日向なく見守ってくれる人の存在が大きいと思います。
 最近、こんな話を直接おばあさんから聞きました。話すおばあさんも、一抹の寂しさの中に、安堵の表情が見られました。
 話を聞き終えて、たとえ野良猫であろうと、その生命を大事にする姿勢に心をうたれました。
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