百島百話 メルヘンと禅 百会倶楽部 百々物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

祖国へ 1 ~リバテー船上 歓びと悲劇~

2010年09月05日 | 人生航海
乗船するまでは、随分長い時間を待ったはずだったが、この船で日本に帰れると思うと、少々位の時間待ちは何も気にならず、歓びで一杯だった。

皆同じ気持ちらしく、大勢の兵隊で岸壁は大変な賑いだった。

そんな混雑の中で、リバテーの乗船係りは、その整理のために忙しく働いていた。

そのうち、いよいよ乗船が始まり可也の時間を費やして、何とか全員が乗り終えた。

船倉に入ると、大勢の兵隊がすし詰め状態で身動きも出来ないほど窮屈であった。

そのうえ暑さで、蒸し風呂のようであり、出港もいくらか遅れたようでもあった。

ようやく船は、岸壁を離れ動き出すと、通風筒から風が入り、幾らか涼しくなった。


復員船リバテーの船員は、2~3人のアメリカ人の指導で乗船していたが、殆ど日本人であった。

いづれ、この私も、帰国後は、こんな船の船員になると思っていた。

名目は、リバテーの乗組員として採用されて帰国するので、内地に着く早々、乗船させられると思っていたのである。

その話を、若い甲板員に聞いたが、仕事は、案外楽でも、兵隊が大勢乗るのが厄介だと言っていた。

嬉しいはずの帰国への航海の途中に、兵隊と上官、初年兵と古兵との間で、お礼参りとか言って、夜間に甲板に呼び出しては、袋叩きにする出来事もあった。

もっと悲しい事件は、夜陰に紛れて海に突き落とした話があったのも多くの事実である。

それも、戦争が残した悲劇なのか・・。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿