映画「ファーザー」を観てきました。
この映画、役者も素晴らしく、その演技力に圧倒されます。
舞台はロンドンに暮らす認知症となった父親とその娘との心の交錯をスリリングに丁寧に描いています。
認知症を扱う日本映画ならば、どうしても介護苦による親殺し、親子心中まで突っ走る傾向が多々ありますが、英国人は、どうかな?
もっと、笑い、ペーソスがあってもよかったのでは?
日々、認知症の高齢者と接していると、その言動に驚く事も少なくなり、時系列ではなくバラバラの過去の時間軸に日々生きていることに気がつきます。
この映画「ファーザー」は、在宅介護から施設に入居するまでの認知症の世界観で映画は終わっていますが、認知症の方の現実人生は、まだまだ終わりません。
昔、英国の上流富裕層の老人ホームでボランティア活動していた頃を思い出しました。
ユダヤ系婦人が隣席のイングランド婦人に食事中に指で横腹をつねられたりするイジメ、入浴中には要介助の白人高齢者を黒人介護者による暴言、乱暴な介助、虐待行為が日常茶飯事だったのを思い出してしまいました。
今の英国社会では、白人介護者も増えたようです。
親が子を認知できないというのは、現状の施設環境の介護世界ではよくあり得る事、不安やら嘆く事があっても、未来を語る事も約束事が守れなくなるのが認知症です。
加えて、施設内では好き嫌いの激しい認知症の方と我慢強く協調性のある認知症ではない方との間でいざこざ、いさかい、イジメとなる場面もあります。
昨晩のNHK スベシャル番組「パンデミック 迫る介護崩壊」を観ていました。
日本の介護崩壊の危機の要因は、低賃金による人手不足、膨れ上がる国家予算の社会福祉分野だと伝えていました。
誠実な農民は、悪人の王子よりも価値があるように、勤勉に働いている介護者は、働かない政治家や批評家よりも価値があるのです。
・・・・声を大きくしないと、この格差社会は変わらないだろうなぁ。
さて、この映画「ファーザー」、医療介護に従事する皆さんは勿論の事、身内に要介護の認知症の方がいらっしゃる御家族の皆様にもお薦めの映画です。