無意識日記
宇多田光 word:i_
 



光が主題歌を唄っている為EVAは作品として幾度も取り上げているが、ハルヒも又重要度の非常に高い作品だ。然しUHFアニメな上今回の初銀幕も全国24館上映というマイナーさ。映画の内容もTV版の延長上にあり敢えて映画館で観る程ではない。が、やはり京アニブランドによる異常な質の高さは凄まじかった。繊細なディテールの積み重ねで編まれた画面の数々。その密度の濃さをくどく感じさせないゆったりと洗練された時間の流れを形作った構築美。150分という呆れる長尺ぶりの必然性を疑うのは誰にとっても全く以て至難の業としか思えない。日本映画で歴史上国際的に知名度があるのは"動"の黒澤と"静"の小津だろうが、前者の路線がヱヴァと喩えるならハルヒは後者か。流石は"ポストEVA"という火中の栗を敢えて拾うだけの事はあると唸らされる出来映えであった。この2ッの映画の関係は、オリジナルとオマージュというより父子に近い。放蕩だがどこか放っておけない親父と、几帳面な性格なのに血は争えない息子。親父の方は今世紀に入って漸く己が才能に自覚が出てきたのか映画という世界に相応しく放蕩さをスケールの大きさに変換して大輪の花を咲かせつつあるが、息子の方は未々やっと同じ土俵に立てたに過ぎない。知名度としては前頭と幕下位の差はあるかもしれないが既に取り組みとして成立するだけの実力は身に付けつつあるとみるべきだ。後は資金力の差位か。EVAが次作で更に飛躍するであろう事は皆の予想・期待する所だが、ラノベを原作とする(そういえば読んだ事がない)ハルヒに今後何処までの爆発力が期待出来るか。今回の劇場版もTV2シーズン分を観ていない人にはちんぷんかんぷんな箇所が幾つもある一見さんお断りな内容だったが、今後もソレは変わらない筈だ。アニメオリジナルが作れる隙も小さいかもしれない(原作を知らないのでよくわからない)。いつまでもローカルヒーローで居て許されるクォリティでは(初アニメ化の時点から)最早ないだけに、今後の展開が気になる。確かに、今回の"消失"もハルヒを知らない人が観てもある程度は楽しめるだろう事は想像できるのだが、メジャーになるとはその様な層を主だって相手にするという事なのだ。EVAだって破でその境地の端緒に辿り着く迄十数年を要している。京アニの場合、ハルヒに拘る事無く他の素材も自在に扱えるだろう(例えばナウシカを引き継がなかったスタジオジブリの様に)が、父たるEVAが壮年にして最盛期を迎えている事を考えるとどうやって10年単位でアニメの進化と成長を蓄積するかが課題となろう。宮崎駿や庵野秀明みたいなカリズマなしでどこまで行けるか。"消失"のハイクオリティはそんな妄想的期待と心配を抱かせるに十分だった。しかしながら、今の所音楽の出来だけはいただけない。あの主題歌のミックスは全く劇場向けではない。EVAが序破で音楽面に著しい成長を見せていたから余計に気になった。勿論相手が宇多田ヒカルでは分が悪いに決まっているわけで、その辺りは経験が解決してくれるだろうから不安視はしていないけど。原作の進行次第だが、更に向こう10年楽しませてくれるアニメシリーズに発展してくれる事を願っている。最後に1ッ。"消失"のTV第3期でのリメイクに期待する。以上。

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