林正太郎氏の作品は、実用性と言うより、鑑賞を第一に考えている様にもみえます。
「自分の心に感じるものを、斬新な志野の作品にし、バランスの良い作品を作る事」を、目指して
いる様です。
尚、釉は福島長石や平津長石を使い、ガス窯で1250℃で六昼夜焼成しているとの事です。
② 林氏の陶芸。
) 面取りの作品。
分厚く轆轤挽きした壷などを、鋸(のこぎり)で、豪快に削ぎ落とした作品です。
尚、面取りの作品は、美濃の山々をイメージして作っているとの事です。
a) 約12Kg の土を高さ30cm程度の作品に仕上げる事から、いかに分厚く轆轤挽きして
いるかが解かります。
b) 面取りは面の数が少ない程、大きく削り取る必要があります。
林氏は6~8面が多い様に見受けられます。
c) 轆轤挽き後一日乾燥してから、40cm程の鋸をやや弓なりにして、歯の方向や背(嶺)を
使い、鋸の両端を持って、切り口が曲面に成る様に一度で、躊躇せずに削ぎ落とします。
尚、鋸は錆びた方が、土離れが良いそうです。
面は螺旋状に切り取りますが、螺旋方向は、作品の形状や、その時の気分で左右に
変化させます。又、螺旋にも変化を持たせ、途中で段差を付けたり、途中で螺旋方向を
変えたり、更には、面の幅などにも広い狭い面と変化を持たせています。
d) 大きな作品に成ると、削ぎに3日間程掛かるそうです。
又、口縁などから割れが出ない様に、角材を用いてしっかり土を締めます。
当然、肉厚の部分(面と面との境=稜線)と、薄い部分(面の中央部)が出ますので、
乾燥による、「割れ」や「裂け」を防ぐ為にも、時間を掛ける必要があります。
e) 面取りの作品: 40歳から約10年間、面取りをテーマとした作品を作っています。
・ 志野壷 : 高 27、径 33.5 cm。
・ 志野桜紋壷 : 高 33.5、径 29 cm。
) その他、花入や、大皿、銘銘皿なども作っています。
・ 志野耳付花入 : 高 25、径 17 cm。
・ 茜志野桜文大皿 : 高 14、径 68 cm。
・ 志野銘々皿(五客) : 高 3.5、径 13 cm。
③ 万葉彩(まんようさい)に付いて。
近年、志野と黄瀬戸を融合し、身近な紅葉や桜、雲、空などの自然を表現する「万葉彩」を
発表しています。一つの作品に、 白、黄色、赤(茜)、薄い青、黒色を散りばめた、柔らかで、
優しい感じの、口の狭い真丸い壷で表現されています。
・ 万葉彩壷 : 高 37、径 45 cm。
次回(山田絵夢氏)に続きます。