わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸203(林正太郎1)

2012-09-27 21:41:53 | 現代陶芸と工芸家達

志野に魅せられ、志野を焼き続け、個展を中心に活躍し、現在の志野を代表する作家に林正太郎氏

がいます。

1) 林正太郎(はやし しょうたろう): 1947年(昭和22) ~  窯名:正神窯(しょうじんがま)

  ① 経歴

    1947年 岐阜県土岐市に窯元の子として生まれます。

     商業高校を卒業後、名古屋で就職しますが、八ヶ月で郷里に戻り、長兄の製陶業を手伝う

     様に成ります。

    1968年 「岐阜県美術展」で、最高賞を受賞します。

    1971年 「朝日陶芸展」で知事賞を受賞します。 以後、連続4回入賞を果たします。

    1975年 日本橋本店(東京)で、個展を開催します。

    1979年 日本工芸会正会員に認定されます。

    1993年 「美濃陶芸展」で、最高賞の「美濃陶芸大賞」を受賞します。

    1994年 「美濃陶芸展」で、「加藤幸兵衛賞」を受賞します。

    1997年 「美濃陶芸展」で、「庄六賞」を受賞します。

     注: 「美濃陶芸展」は、東濃と呼ばれる岐阜県多治見市、可児市、土岐市、瑞波市などで

         窯業を営む、実力のある陶芸家(美濃陶芸協会所属)が出品する陶芸展で、上記

        三賞は毎年一点づつ選ばれるもので、美濃の陶芸家にとっては、大変重要な賞となって

        います。この三賞を次々に受賞したのは、林正太郎氏が始めてとの事です。

     2002年 土岐市指定 重要無形文化財保持者に認定されます。

  ② 林氏の陶芸。

    土岐市の窯元の家に生まれながら、焼き物に全く興味を示さなかった林氏ですが、名古屋での

    サラリーマン生活に飽き足らず、帰郷して焼き物に向き合う事になります。

   ) 初期の頃は、ガス窯で、鉄釉などの天目や、黄瀬戸などの様々な作品を作っていましたが、

     個展の会場で、「美濃で作るのなら志野だ!」と来場者の一言で、志野に絞り込んだと、

     語っています。

   ) 一貫して志野の茶陶を焼いていますが、十年程は面取りの技法による壷を発表しています

     近年では、「万葉彩」と呼ぶ壷を制作しています。

   ) 茶陶では主に抹茶茶碗を作り、白い志野以外に、絵志野、赤志野を手掛けています。

    a) 志野茶碗: 茶碗に使う土は、市販の土を数種類ブレンドしたもので、壷や花器を作る

       土より粒子が細かく、水分をやや多く含む柔らかな土を使うとの事です。

       電動轆轤上に約8kg程の土を据え、7~8個の茶碗を挽くそうです。

     ・ 筒状に挽いた茶碗の形造りは、口造りと高台削りによって、良し悪しが決るそうです。

       即ち、口縁に山道(緩やかな起伏)を付ける為に、針で高低差を付けて切ります。

       正面に成る部分は、やや低くします。更に、切口を押さえながら、口を外に開き端反にして

       から、三角形に変形します。

     ・ 高台削りは、肌を荒らすし、志野独特の釉肌にする為に「木ベラ」で行います。

       削ると言うより、削ぎ落とす感じで、高台脇から削り出し、高台際、高台内の手順で作業を

       します。豪快な志野茶碗は、焼成後の出来上がりの重さは、530~550gで、手に取った

       際にバランスの取れた物が良いとされています。その為かなり削り込みが必要です。

     ・ 割高台の作品は林氏の一つの到達点でもあります。

      底は肉厚に轆轤引きし、高台脇を削り終えた後、高台際を細くしてから高台を高く削り出し、

      高台に十字の溝を「木ベラ」で彫り作ります。

     ・ この様に成形された作品は、化粧掛けや釉により、絵志野や赤志野茶碗になります。

   b)  絵志野: 素焼きした後、濃い目の「ベンガラ(弁柄)」 を使い筆で模様を描きます。

     絵の題材は、竹、竹の子、蕨(わらび)、木賊(とくさ)、芒(すすき)、山、月、鳥など自然界の

     物や、抽象的な丸や三角模様もあります。

    ・ 長石釉を掛ける: 柄杓(しゃくし)掛けで施釉します。

      茶碗の内側は均一に施釉し、外側は濃淡を付ける為に、部分的に二重掛けします。

      又、指でこすったり息を強く吹き掛ける事によって、その部分の釉を薄くする事もできます。

      薄くなった部分は、下地の弁柄の鉄分が化学変化を起こし、緋色になる場合が有るそうです

   c) 赤志野: 素地土に10%の弁柄を入れ、化粧土を作ります。

      完全に乾燥した素焼き前の作品に、柄杓を使って内外に化粧土を流し掛けします。

      茶碗の腰の部分に息を強く吹き掛けて、化粧土の一部を吹き飛ばします。

      その後に、素焼きを行います。尚、化粧土は半年ほど寝かせてから、使用するそうです。

     ・ 緋色を出す為に、濃度の異なる釉を二種類用意し、薄い方の釉を柄杓で内側に掛けてから

       腰の部分を鷲掴(わしずかみ)にして、漬け掛けします。更に濃い目の釉を「おたま」に取り

       腰の周りの要所要所に二重掛けします。こうする事により、緋色と白の対比が鮮明な

       赤志野茶碗が出来るとの事です。

      ・ 志野焼の釉の厚みは、焼成後で5mm程度有るそうです。

   d) 林氏に茶碗

      ・ 志野茶碗: 高 9.5、径 13.5 cm。

      ・ 絵志茶碗(蕨文): 高 9.8、径 13.5 cm。 絵志茶碗(とくさ文): 高 9.6、径 14.5 cm。

      ・ 赤志野割高台茶碗: 高 10.8、径 14x13 cm。

以下次回に続きます。

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