現在では、自作した作品にサイン(銘)を入れるのは、一般的な事です。
但し、民藝作家と呼ばれる人々の間では、サインを入れる事はほとんど無いか、少ない様です。
特に陶芸教室や陶芸体験など不特定多数、又は複数の人が同一窯で焼成する共同窯の場合には、
作品が誰の物かを特定する為に、サインは不可欠です。
サインを入れる場合、どの様なサイン(銘)を、作品のどの位置にどの様な方法(用具)で入れれば
良いのか迷う事があるかも知れません。勿論こうしなければ成らないと言う決まりはありませんが、
ある程度の予備知識があれば、迷いも少なくなるかも知れません。
1) サインの種類。
個人を特定する印ですから、何でも良いのです。当然他の人と混同する印であってはなりません
尚。贋作として他人の銘を入れる場合がありますが、ここでは取り上げません。
例えば、フルネーム、イニシャル、マーク、窯印等多彩です。漢字、平仮名、カタカナ、英数字
アルハベット、独自のマーク等です。崩し文字や筆記体など、書体にも「こだわり」を持つ人も
います。サインは一人一個を基本にしますが、場合によっては、複数個使い分ける事もあります
別人が同じサインを用いる場合、そのサインを丸や四角で囲み、区別する事も出来ます。
作家さん達は、作品の種類別、制作時代別などで使い分ける場合があります。
2) サインを入れる場所
① 一般にサインは目立たない場所に入れる事が多いです。特に作品の正面は避けた方が良い様
です。尚、あえてサインを強調し目立つ場所に入れる事もあります。
② 作品の底面(高台内)、高台脇(左右側面)が多いです。裏正面は少ないです。
側面の場合、正面から見てしっかり見える必要はありません。作品をやや回転させれば確認出来
る位置に入れれば十分です。底面の場合は、当然ひっくり返して見る事に成ります。その際
サインの天地(上下)方向に注意し、読み易い方向や位置でサインを入れます。
③ 角の大皿の場合、作品の上面の隅に入れる事もあります。
印影も一つの景色(見所)となるからです。その際、丸い印よりも角印の方が見栄えがします。
但し、印を捺す事で、作品の上下が自然に決定されますので、良く考えてから捺印します。
3) サインの入れ方と用具。
① 彫り込む方法。
素地が手に持てる程度のやや乾燥した後に、先の尖った針、釘、竹ひご等で表面を引掻いて彫り
込みます。
② 印を捺す。
半乾きの状態で捺印します。印は特別注文で作って貰う事もありますが、自作の陶印を使う事が
多いです。尚、印影には、銘が出っ張る凸型と、凹型があります。後者の方がより鮮明に出る
傾向があります。いずれの際にも、出来るだけ作品の裏側に手を添えて押さえ込むとより鮮明に
なります。曲面の場合、印を曲面に応じてやや回転させる必要があります。即ち角角と四隅を
捺してから、印の中央に力を入れます。
乾燥の甘い素地には、印又は素地に片栗粉を着けると、型離れが良くなります。
尚、次回「陶印の作り方」をお話します。
③ 下絵付け用の絵の具でサインを描く、又は捺印する。
ⅰ)下絵の具として、呉須や鬼板などが昔から使われてきました。
ⅱ)下絵付けは素焼き後に行うのが本筋ですが、生素地に入れる事も可能です。
ⅲ)筆で描くか、印はゴム製の判子を使うと便利です。
4) サインを入れるタイミング。
① 板皿の場合
タタラ作りで板皿を作る場合、形作りの前にサインや捺印を入れると、平面状態ですので入れ
易いです。但し、形作りの際、縁を持ち上げますので、銘(サイン)が縁に近いと、銘が変形し
易いですので、ある程度縁から離して銘を入れます。印は素地が軟らかい方が、しっかり現れ
ます。但し、力を入れ過ぎない様に、力加減に注意が必要です。力不足の場合印が不鮮明に成り
ますので、再度捺す事も出来ますが、印影がズレ無い様に注意が必要です。
② 轆轤挽き後の作品の場合。
高台などの削り作業後に行います。カップの取っ手や急須など組み立てる必要のある作品は
組み立て後に銘(サイン)をいれます。捺印の場合、素地が乾燥し過ぎてハッキリ出ない場合
には、素地の表面を水で濡らし、一分程放置すればその部分は柔らかくなりますので、捺印が
容易に成ります。
5) サインは作品の使い勝手を考えて入れる。
サインは縦書き、横書き、斜め書きであってもかまいません。
① 円形の作品であれば、正面を向けたまま向こう側に傾け底にサインをいれます。サインは中央
又はやや下側にいれます。その際サインの上部は中心方向に向け、下部は縁(高台)側になる
様に入れます。天地が判り難い入れ方は、サインを読み取るのに苦労します。
② 取っ手など作品に方向性がある場合、使う状態(取っ手を持った状態)で引っくり返し底に
サインを入れます。側面に入れる場合には、取っ手の下部の付け根付近に入れます。その際、
取っ手の手前側に入れる方法と、外側に入れる方法があります。手前側では自分に向ける事に
なり、外側では相手に向ける事になります。いずれであってもかまいませんが、銘をアピール
するのであれば、外側に成ります。
6) サインの上に施釉すると、釉の為に見えなくなる場合があります。その為、サインの上に撥水
材を塗り、釉が掛からない様にする場合もあります。彫り込んだり、捺印した場合には、ブラシ
で、釉を取り除く事もできます。
以上、サインを入れる際の参考にして頂ければ幸いです。
但し、民藝作家と呼ばれる人々の間では、サインを入れる事はほとんど無いか、少ない様です。
特に陶芸教室や陶芸体験など不特定多数、又は複数の人が同一窯で焼成する共同窯の場合には、
作品が誰の物かを特定する為に、サインは不可欠です。
サインを入れる場合、どの様なサイン(銘)を、作品のどの位置にどの様な方法(用具)で入れれば
良いのか迷う事があるかも知れません。勿論こうしなければ成らないと言う決まりはありませんが、
ある程度の予備知識があれば、迷いも少なくなるかも知れません。
1) サインの種類。
個人を特定する印ですから、何でも良いのです。当然他の人と混同する印であってはなりません
尚。贋作として他人の銘を入れる場合がありますが、ここでは取り上げません。
例えば、フルネーム、イニシャル、マーク、窯印等多彩です。漢字、平仮名、カタカナ、英数字
アルハベット、独自のマーク等です。崩し文字や筆記体など、書体にも「こだわり」を持つ人も
います。サインは一人一個を基本にしますが、場合によっては、複数個使い分ける事もあります
別人が同じサインを用いる場合、そのサインを丸や四角で囲み、区別する事も出来ます。
作家さん達は、作品の種類別、制作時代別などで使い分ける場合があります。
2) サインを入れる場所
① 一般にサインは目立たない場所に入れる事が多いです。特に作品の正面は避けた方が良い様
です。尚、あえてサインを強調し目立つ場所に入れる事もあります。
② 作品の底面(高台内)、高台脇(左右側面)が多いです。裏正面は少ないです。
側面の場合、正面から見てしっかり見える必要はありません。作品をやや回転させれば確認出来
る位置に入れれば十分です。底面の場合は、当然ひっくり返して見る事に成ります。その際
サインの天地(上下)方向に注意し、読み易い方向や位置でサインを入れます。
③ 角の大皿の場合、作品の上面の隅に入れる事もあります。
印影も一つの景色(見所)となるからです。その際、丸い印よりも角印の方が見栄えがします。
但し、印を捺す事で、作品の上下が自然に決定されますので、良く考えてから捺印します。
3) サインの入れ方と用具。
① 彫り込む方法。
素地が手に持てる程度のやや乾燥した後に、先の尖った針、釘、竹ひご等で表面を引掻いて彫り
込みます。
② 印を捺す。
半乾きの状態で捺印します。印は特別注文で作って貰う事もありますが、自作の陶印を使う事が
多いです。尚、印影には、銘が出っ張る凸型と、凹型があります。後者の方がより鮮明に出る
傾向があります。いずれの際にも、出来るだけ作品の裏側に手を添えて押さえ込むとより鮮明に
なります。曲面の場合、印を曲面に応じてやや回転させる必要があります。即ち角角と四隅を
捺してから、印の中央に力を入れます。
乾燥の甘い素地には、印又は素地に片栗粉を着けると、型離れが良くなります。
尚、次回「陶印の作り方」をお話します。
③ 下絵付け用の絵の具でサインを描く、又は捺印する。
ⅰ)下絵の具として、呉須や鬼板などが昔から使われてきました。
ⅱ)下絵付けは素焼き後に行うのが本筋ですが、生素地に入れる事も可能です。
ⅲ)筆で描くか、印はゴム製の判子を使うと便利です。
4) サインを入れるタイミング。
① 板皿の場合
タタラ作りで板皿を作る場合、形作りの前にサインや捺印を入れると、平面状態ですので入れ
易いです。但し、形作りの際、縁を持ち上げますので、銘(サイン)が縁に近いと、銘が変形し
易いですので、ある程度縁から離して銘を入れます。印は素地が軟らかい方が、しっかり現れ
ます。但し、力を入れ過ぎない様に、力加減に注意が必要です。力不足の場合印が不鮮明に成り
ますので、再度捺す事も出来ますが、印影がズレ無い様に注意が必要です。
② 轆轤挽き後の作品の場合。
高台などの削り作業後に行います。カップの取っ手や急須など組み立てる必要のある作品は
組み立て後に銘(サイン)をいれます。捺印の場合、素地が乾燥し過ぎてハッキリ出ない場合
には、素地の表面を水で濡らし、一分程放置すればその部分は柔らかくなりますので、捺印が
容易に成ります。
5) サインは作品の使い勝手を考えて入れる。
サインは縦書き、横書き、斜め書きであってもかまいません。
① 円形の作品であれば、正面を向けたまま向こう側に傾け底にサインをいれます。サインは中央
又はやや下側にいれます。その際サインの上部は中心方向に向け、下部は縁(高台)側になる
様に入れます。天地が判り難い入れ方は、サインを読み取るのに苦労します。
② 取っ手など作品に方向性がある場合、使う状態(取っ手を持った状態)で引っくり返し底に
サインを入れます。側面に入れる場合には、取っ手の下部の付け根付近に入れます。その際、
取っ手の手前側に入れる方法と、外側に入れる方法があります。手前側では自分に向ける事に
なり、外側では相手に向ける事になります。いずれであってもかまいませんが、銘をアピール
するのであれば、外側に成ります。
6) サインの上に施釉すると、釉の為に見えなくなる場合があります。その為、サインの上に撥水
材を塗り、釉が掛からない様にする場合もあります。彫り込んだり、捺印した場合には、ブラシ
で、釉を取り除く事もできます。
以上、サインを入れる際の参考にして頂ければ幸いです。