わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸89(和太守卑良)

2012-04-08 15:21:45 | 現代陶芸と工芸家達
現代陶芸の旗手として、手捻りと紐造りで造形を試み、多彩な文様による装飾性と独創的な美しい作品を

作り続け、個展や海外での展覧会出品も多く、内外で高い評価を受けている、笠間在住の陶芸家が

和太守 卑良氏です。

1) 和太守卑良(わたもり ひろ)本名 和田守弘(わだ もりひろ): 1944年(昭和19) ~2008年

  (平成20) 享年64歳 

 ①  経歴

  ) 兵庫県西宮市仁川に、和田卯三郎(会社役員)の長男として生まれます。

    1962年 大阪府立北野高校卒業後、京都市立美術大学工芸科陶磁器専攻に入学します。

    ここで、富本憲吉教授に出会い、近藤悠三、藤本能道、清水九兵衛に師事し、加茂田章二や

    柳原睦夫氏などと知り合いになります。

  ) 1967年 同校を卒業後、高知県安芸郡内原野に移住し、窯を築きます。

    翌年には、高知県で初の個展を開いています。その翌年には、内原野三太郎工房を設立します。

    1975年 第三回日本陶芸展で「杉文(さんもん)器」が初入選を果たします。

    1977年 茨城県笠間市に窯と仕事場を作り移住します。

    (当時益子では多くの陶芸家がおり、たまたま笠間に空き地があり入手したとの事です。)

    同年、第四回日本陶芸展で「雲花文器(せっき)」が入選します。第五回展では「杉文器」が

    第六回展では「彩土杉文器」が入選します。

  ) 1980年 ファエンツァ(イタリア)国際陶芸展で、「杉文器」が金賞を受賞します。

    同年 伝統工芸新作展で「飛鳥文鉢」が入選します。

    以後も、東京南青山、日本橋高島屋での個展や、香港、アメリカ、カナダなど海外の展示会などの

    招待出品を重ねています。 1988年 日本陶磁協会賞を受賞しています。

    又、近年連続企画の「和太歳時器」展を毎年催し、古来の陶芸技法による作陶の試みを

    展開していました。

    尚、2002年「NHK趣味悠々 秋元康の陶芸入門、和太流で土と遊ぶ」にも出演していました。

 ②  和太守 卑良氏の陶芸

  ) 成形はほとんど手捻りで行っています。地元の笠間には様々な土が有り、その含有物により
    
     焼成すると、灰緑色、暗褐色、紫紺色その他の色に焼き上がると言われています。

     又、笠間付近には、岩石が風化して、砂と土の中間状態の崩壊砂も存在しています。

     これらの材料を利用して、和太守氏の独特の地肌や文様の作品を作り上げています。

  ) 杉文(さんもん)と雲花文(うんかもん)

   a) 彼の個展の際の案内状に杉文についての説明がありますので、引用します。

    「微妙な色相の変化する春の杉林が好きです。その杉の形や線に興味を持って杉の癖と

    私の手の癖を重ね合わせている内に、一つの性格を持った線の群れが出てきました。それを

    自分で杉文と呼びました。」とあります。

  b) 鉄分の多い山土で成形し、表面に杉文を線彫りし、砂分の多い泥漿(でいしょう)を象嵌風に

     刷り込み焼き締めた作品です。

  c) 雲花文の名前の由来は、最初は特定の花の文様が、次第に抽象化され原型を大きく外れ、

    雲の様になってしまった為、雲花文と呼ばれる様に成ったそうです。

  d) 作品には、「杉文器」(1975)「雲花文器」(1977)「杉文器」(1979)「杉文器」((1980)

    「彩土杉文器」(1980)等があります。

 ) 砂瓷(さじ)の作品

  a)  鉄分の多い土に、長石分の多い白い泥漿を文様に塗り、直ぐに上記崩壊砂を振り掛けて、

    定着させます。色の異なる数種の砂を、模様状に配置します。更に板を使い全体を軽く叩き

    埋め込みます。焼成は1250~1300℃で焼いた物で、器肌に細かい砂が無数に張り付いています。

    これは彼独自の技法で、砂瓷と呼んでいます。

  b) 作品として1980年代の「砂瓷風草文器」(同名の数種類の作品)が有ります。

    注: 瓷器(ジキ)とは、中国唐代では施釉の器を指し、現代中国では磁器を瓷器と表記します。

    
次回(會田雄亮氏)に続きます。
    
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