小澤征爾 覇者の法則 -試練を幸運に変えた巨匠の秘密とは?-

2014-09-01 07:57:18 | 日記

中野 雄著   文春新書

小澤征爾に関する本は何冊か読んだけれど、本書は一味違うと思う。著者の経歴にオーディオメーカーの役員をしていたことがあるからだろう。つまり、クラシック業界の内側からの解説が目新しいと思った。但し、「小澤賛歌」が目に付きすぎて少々煩わしい。しかし、無理もない。小澤は著者の「大好きな人」なのだから…。クラシック業界に詳しい人でないと、記事のある部分では誤解を招くかも知れないし、「楽隊屋」という言葉の意味も由来も知らない人が多いかもしれない。
しかし、「サイトウ・キネン」というオーケストラ、アェステバルの存続を危ぶむ著者の懸念はよく分かる。最近、この名称が変わったという記事を読んだが、著者の懸念は今なお存続している。それは、オーケストラの質である。著者が文中で何度も言っていることだが、変わるのは宿命である。問題は誰が変えるのか、どう変わるのかであろう。
ちょっと、気に掛かる問題ではないだろうか。