世にも奇妙な人体実験の歴史

2012-07-31 16:24:13 | 日記

トレヴァー・ノートン著  文藝春秋社刊

本書は心して読むべき本だと思う。腰巻の「……常識を覆すマッドな実験が満載!!」に惑わされてはいけない。確かに、冷静に考えればどうしてそんなことを、自分の身体を使って実験したの? と思うような事が紹介されている。しかし、その裏にある彼等の真摯な動機を見過ごしてはいけない。
印象的なのは、伝染病の病原菌を自らに感染させた医師の言である。「この病気の感染から重篤になるプロセスは医師である私が記録するのが、最も適切である。もし、私が不幸にして死に至ったならば、この記録を役立てて欲しい」。彼は亡くなった。その意思を継いだ同僚によつてワクチンは完成した。
自己犠牲を礼賛するつもりはない。しかし、そのくらいの真摯な情熱が医者や科学者には必要なのではないだろうか。彼等のお蔭でどれほどの人々の命が救われたか、頭の下がる思いだ。
思い出した。エイズに関して最後まで責任も取らず、白を切り通した医学者がいたのを。日本の大学の医学部の教授だったか、学部長だった。それに悪乗りした薬品メーカーもいたな。


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