江戸の色道  -古川柳から覗く男色の世界-

2013-08-27 08:43:39 | 日記

渡辺信一郎著   新潮選書

そもそも本書を買った動機は、『続春画』(平凡社 2008年)による。これらの春画の中に男色者・陰間が登場するのだが、これ自体には違和感はなかった。中国どころか古代エジプトの壁画にさえ描かれているのだから、男色は人類普遍のセックスライフだと思っている。
興味を持ったのは、この春画の中に陰子と遊女・亭主と女房と若衆(女房の妹まで参加している)といった組み合わせの春画があったことである。武士・僧侶・役者といった人々にその習慣があったのは周知のことだし、西欧でもそうだった。しかし、この中に一般庶民の夫婦や女性が陰間の顧客だったということは……? どうやら男色は男性の専売特許ではなかった。春画に登場しているということは、庶民の間でも特別の違和感はなかったということらしい。
なんとも大らかというか、無節操(今日の常識で言えば)のような気がするが、なんのわだかまりも持っていないようなのが面白い。本書にも勿論取り上げられている。そこで疑問なのは、この日本人の自由奔放なセックスライフが、なぜ禁忌となったのかである(良い悪いではない)。多分、明治以降欧米文化(というかキリスト教的な)を受容した時点からではないだろうか? 
残念ながら、本書はそこまで筆が及んでいない。当然だろう。著者の執筆意図は違うからである。しかし、ここまで男色に造詣が深い著者であれば、そこまで言及してほしかった。最近のホモセクシャルやレスビアンに対する世界的な動向を考えると、著者だからこそ言えることがあったと思うのだが……。
まっ、古川柳からこれを類推するのは、無い物ねだりだが。


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