骨から見た日本人 -古病理学が語る歴史-

2013-02-15 17:05:31 | 日記

鈴木隆雄著   講談社選書メチエ 142

読後感を一言で言えば、殆ど「学者の論文」である。とにかく専門用語で占められていて、読むのに苦労した。この時ばかりは漢字が表意文字であって良かったと痛感した次第。勿論、この「古病理学」という分野が日本では希少であり、従って研究者が少なく、発表の機会も少ない、というのが一般向けにこなれた文章になっていない、ことに繋がるのかも知れない。
それはともかく、古代の遺跡から発見された人骨でこれだけのことが分かる、というのには驚いた。過酷な肉体労働による骨の障害、戦闘による致命傷、癌患者、ストレス障害、結核、梅毒といったことが人骨から分かるのである。古代人の人骨から古代人の生活、あるいは石器、骨器、銅・鉄器が武器として使われた場合の損傷などから、古代人の生活史が書けるのではないかと思ったほどだ。なにしろ、これくらい確かな証拠はないのだから。ただし、遺跡には骨しか残らないから自ずと限界があるのも事実だが。
というわけで人間の、いや動物の骨も含めて、いろいろな証拠を残すものだと感心した。どうやら、アル中の人の骨も後世の人には分かってしまいそう。「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」とはいかず、「恥を残し」かねない。気をつけましょう、御同輩。


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