高峰秀子との仕事  1・2

2011-04-23 09:51:50 | 日記
斎藤明美著  新潮社刊

1のサブタイトルは「初めての原稿依頼」、2は「忘れられないインタビュー」。
人はこれほどまでに解り合えるものなのだろうか。22年に及ぶ月日の流れが必要だったとしてもだ。
最初に著者の本を読んだ時「とおちやん、かあちやん」と高峰・松山夫妻を呼ぶことに違和感を憶えた。他の人は知らず、どれほど親しくなったとしても他人を「とおちやん,かあちゃん」と呼ぶ仲になることは、まず、ない。
しかも、著者と夫妻の関係は決してベタベタしたものではない。それは夫妻の人生が甘えることが許されないものだったことに由来するのだろうが、著者は砂に水が滲みこむように我が物にしていく。一介の取材記者とインタビューされる者の関係がここまで行き着くことなど想像もできない。
養女に迎えようと決心した夫妻、養女なれることを幸せに思う著者、多少意味は違うが「琴瑟相和す」とはこうしたことを言うのではないだろうか。夫妻を尊敬し、慕う著者、少しでも一人前の人間に育てよう根気よく導く夫妻。とても、今の時代には求めて得られるものではない。というか、稀有なことだ。「幸せな人たち」としか言いようがない。
蛇足だが、著者の文章がいい。インタビューや座談をまとめる力が凄い。相手をきっちりと把握しているからなのだろう。その場の雰囲気は勿論、話している人の人柄までわかる。
今回は著者について書いてしまったが、高峰秀子も松山善三氏も素晴らしい人たちで、こんな人たちはもういないのではないかと思い、もう少し早く生まれて来るのだった、臍をかんだ噛んだ次第。ぜひぜひ読んで欲しい。


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