利他的な遺伝子

2012-03-07 14:25:07 | 日記

柳澤嘉一郎著  筑摩選書

サブタイトルは「ヒトにモラルはあるか」。正直に言う。プロローグを読んだ時、胸に手を当てて考えた。「私の中に利他的な遺伝子はあるのだろうか?」。確かに著者が挙げる事例は私も見聞しているし、そういう事実は認める。しかし、私自身の中では「自分がこうすれば、褒められるのでないか? これくらいならば、自分に対してはさほど負担にはならないのでは?」という「利己的遺伝子」の囁きが聞こえてしまうのだ。しかし、自分の命が懸かった場合はどうだろうか。それを考えると「怖い」。
でも、そういう話ではないのですね。著者の言いたいことは至極真っ当なことで、「最近のキレる子供、両親」の原因を遺伝子レベルで解明することだったのて゜す。結論的に言えば、利己的遺伝子は古い遺伝子(人類を含めた生物が最初から持っていた)であり、利他的遺伝子は乱暴な言い方をすれば集団生活をするようになってから獲得した後発の遺伝子ということらしい。
安心した。私にも利他的遺伝子はあるのだ(まだ、明確に自覚はしていないが)。
つまり、今キレる世代が増えたのは、家族(三世代を含む親戚集団)の崩壊にある。要するに、利他的遺伝子の発露される現場を見ていない・経験していない、ということに尽きるらしい。いや、家族だけではない。企業も国家も同じ。
せめてもの救いは、我々は利他的遺伝子を体内に持っているということだ。今回の東北大震災が良い例だ。しかし、これは特異な例だ。日常的生活の中でこの遺伝子がさり気なく発露される社会を築くことが急務なのだろう。
著者のメッセージは重い!!

 

 

 


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