中東民衆革命の真実 -エジプト現地レポート

2011-09-05 15:18:37 | 日記
田原 牧著  集英社新書

チュニジアの「ジャスミン革命(2011年1月14日)」に次いで、エジプトのムバーラク追放という革命はわずか18日間で成功してしまった(1月25日~2月11日)。
ここで問題なのは主役が若者を中心とした民衆だったことであり(著者自身でさえエジプトで民衆革命なんて起きる筈がないと確信していた)、その手段がフェイスブック・ツィッター・ウィキリークスだったという日本の報道である。この報道から我々が想像するのは、携帯やノートパソコンを手に手にタハリール広場に集まった若者の姿だ(事実、日本のテレビ放送ではそういうシーンが多かった)。
エジプトのカイロ・アメリカン大学に留学し、東京新聞のカイロ特派員を5年、その前に湾岸戦争、ルワンダ内戦の現場を取材した視線は鋭い。
まず、若者達でパソコンや携帯を持っていた者は少なかった(これらを持てたのは富裕層の子女だけだった)。それでもフェイスブックが活躍できたのはネットカフェの存在だった。もうひとつ。15~24才の識字率は85%だが、国民全体の識字率は3割程度という事実だ。ジャスミン革命の情報を共有できたのは若者層だった理由はここにある。
もうひとつ。この革命には核となる指導者も政治的・宗教的イデオロギーもなかった。それどころか、誰も革命後の青写真すら持っていなかった!(これが不思議)
そして、第3点。さすが現場を踏んだ特派員だと思うのは、実は既存の反政府勢力がこの革命の実質的な下支えをしていたという指摘である。警察や軍隊にどう対処するのか、食事や怪我人は誰が世話をするのか。こういったことは彼等の上の世代がになったのだ。これは革命ごっこではないのだ。果たして、若者達だけで成功しただろうか?
この後の行方は分からない。おそらく利権を巡る鬩ぎあいが起きる。
「百聞は一見に如かず」という俚諺があるが、それを地で行ったレポート。ぜひ読んでください。

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