清水義範著 新潮社刊
さすが、ユーモア小説の大家、哲学者を俎板に載せたユーモア小説というのは滅多にない(哲学者の伝記で数行のユーモアというのはよく見るけれど)。とくに、脚注に著者の面目躍如といった趣があって楽しい。
しかし、タイトルの『考えすぎた…』ではないけれど、普通の人ならば「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし」に終わるのだが、そこの「過ぎたる考えすぎ」が「人間の歴史をいくらか面白くしている」、という著者の指摘は真っ当で、ここに本書を一読する価値がある。
ソクラテスからサルトルまで、ユーモアと茶化しに徹底しているが、どうもマルクスに関しては著者の本音が出ているように思うが、「清水先生、違いますか?」。