アグルーカの行方

2012-10-11 15:19:01 | 日記

角幡唯介著   集英社刊

極寒の北極圏は凄まじい所らしい。そこを1600キロ徒歩で走破したというのだから,並大抵の話ではない。ただし、一人ではない。北極探検家のベテランと二人とだった。
しかし、今回分からなかったのは、この冒険の目的である。「1845年、北西航路開拓にチャレンジした英国の探検家ジョン・フランクリン率いる129人が還らなかった軌跡を追う」というのがテーマだそうだが、彼等の軌跡を忠実に辿ったわけでもないし、この探検隊が全員死亡した原因をきちんと究明したわけでもない。この記述から分かるのはこの探検隊どれほど過酷な状況下で実行されたかである。その行程を実体験したのだから、それはそれで十分評価されていいのだが、ことフランクリン隊の全員死亡したことに関しては彼の推測とこれまでの文献の範囲を超えていず、説得力があるとはとても思えない。
むしろ、冒険に先立つ計画の詳細(どういう理由でこの計画が立てられたのか)と、実地に立った経験との違いを照合・検討を詳述した方がこれから同じような冒険をしようとする人々の参考になったのではないか(但し、随所にそうした記述は見られるのだが、それが散漫に流されているのが残念だ)。
帯のコピーを見て買った者としては、期待外れだった。