ジグザグ山歩き

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アメリカンスナイパー

2015-02-26 10:00:49 | 映画
同じ日に偶然、戦争映画を2本見た。フレッド・ジンネマン監督の「地上より永遠に」とクリント・イーストウッド監督の「アメリカンスナイパー」である。昔と現在の映画である。
「地上より永遠に」は、海岸でバート・ランカスターとデボラ・カーのラブ・シーンのポスターを見かけることはあったが、実際に映画で描かれているのは、太平洋戦争前夜のアメリカ軍ハワイ基地内における軍人たちの腐敗でもある。いわば、軍隊批判の映画でありながら、戦時における不倫劇やロマンも描かれている。モンゴリー・クリフト扮するプルー・イットが味わう暴力や非道の数々は、軍隊における組織の非人間性となる。それでも軍隊を愛してやまない主人公の運命も考えさせられる。
「アメリカンスナイパー」は、イラク戦争で、海兵隊の狙撃記録を上回る160人という新記録を打ち立てた狙撃手の物語である。特殊部隊ネイビー・シールズ最強の狙撃手となったクリス(ブラッドリー・クーパー)は、イラク戦争の最前線で目覚ましい活躍を見せる。だが、同時にテロリストにとって高額の賞金首となるのだった。主人公は結局、約1000日の最前線勤務を務めあげ、まさに「伝説」というあだ名にふさわしい海兵隊員として崇められることになる。しかし、同時に心が病んできた主人公の苦悶もある。戦争の狂気に取りつかれつつ、故国で待つ家族をこよなく愛する主人公の光と影を描いている。スーパーヒーロの映画では決してない。
クリスは父親から「お前は羊たちを略奪者たる狼から守る番犬たれ」と教えられて生きてきた男。クリスのよりどころが「自分には力がある」「自分は番犬である」「だからか弱き国民を、敵のオオカミから守らねばならない」「俺にはその責任がある」なのだ。だが、イーストウッドは、「強いアメリカ」「幻想のアメリカ」というアメリカの価値観という名の神話そのものを打ち崩している。クリスが犬に殴り掛かるシーンに象徴されている。彼が殴ったのが狼でなく「番犬」だった。ここにも深い意味がありそう。
人を殺すという極限的な行為は、正義のためとはいえ、人間の精神に深い影響を与えることは間違いがない。クリスはでっち上げられた戦争の大義を疑わないから罪の意識はないはずだった。しかし、彼は崩れていく。殺しという業が無意識に溜まり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる。精神の障害に苦しむことになる。除隊後、自分と同じようにPTSDに苦しむ帰還兵を救う活動をして、彼なりの贖罪だったのが、結果的には仇になってしまう。単純な戦争映画ではないことだけは間違いがない。
この2作の映画。戦争のもたらす闇の部分や運命をしっかり描いている。

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2 コメント

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Unknown (カモシカ)
2015-03-01 15:09:04
>戦争のもたらす闇の部分や運命
またもや意味ある映画を。若者と会話する機会がありましたが、阪神淡路大震災を知らない、オウムを知らない、そんな世代でした。まして、戦争のことなど。私は、祖父や父母、伯母などから戦時中の有様を聞いたり、幼少期の白黒TV番組で まだなんとか戦争の惨たらしさや悲惨さを想像できますが、今の若い人たちは?と考えるとちょっと怖いです。集団的自衛権の問題の先にあるものまで、彼らは自分たちのこととして想像が及ぶのだろうかと。(余談コメントですみません)
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カモシカさん (つばさ)
2015-03-04 19:33:12
>集団的自衛権の問題の先にあるものまで、彼らは自分たちのこととして想像が及ぶのだろうかと。

まさに、今若い人たちが政治に無関心で、気づいてみれば、とんでもない状況になっていないかと心配です。今の首相は非常に危うい状況に持っていこうとしているのに危惧を感じています。
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