ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

天使の分け前

2013-05-15 16:42:31 | 映画
イギリスのケン・ローチ監督の最新作『天使の分け前』を観に行ってきた。本作は、昨年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品で、5月31日に閉館する銀座テアトルシネマのクロージング作品に選ばれた。同館は、銀座1丁目に根付いた映画館として、長らく映画ファンに愛されてきた。
主人公はグラスゴーに住む若者ロビー(ポール・ブラニガン)。職も家もないうえに、親の代からの宿敵にしつこく付け狙われ、ケンカ沙汰が絶えない。恋人と生まれてくる赤ん坊のために人生を立て直したいが、再びトラブルを起こす。しかし、恋人との間にできた子どもがじき生まれることを鑑みて、刑務所送りではなく社会奉仕活動をするよう言い渡される。そこで出会ったのが現場の指導者でありウイスキー愛好家であるハリーと、ロビーと同じように失業中の作業仲間だった。 ロビーは、“テイスティング”の才能に目覚め、自分に自信を持ち始める。そして、仲間たちと一世一代の大勝負に出る。
スコッチ・ウイスキーで有名なスコットランド。この地は今、不況にあえいでいて、若年層の失業率が、異常に高いという。本作の舞台はグラスゴー。失業中の若者の軽犯罪も多い。呑んだくれて、駅のホームに侵入。つまらないことでの喧嘩。社会保障手当の不正受給。万引き、器物損壊・・。裁判所では、こういった事件を起こした若者に、社会奉仕を命ずる。公共施設のペンキ塗りや、墓地の清掃やら。定職もなく、軽犯罪を犯した若者たちの社会奉仕活動を指導、面倒を見る指導員が大のウイスキー好きだったのである。
「天使の分け前」とは、ウイスキーが樽の中で熟成される間、年に2%ほど、自然に蒸発していく分量のこと。したがって、樽で長く熟成されるほど、ウイスキーの量が減り、香り高く、旨くなるという。10年もの、20年以上のものなど、年数が増えるごとに、「天使の分け前」が増える、というわけである。
主人公のロビーを演じたポール・ブラニガンは、脚本を書いたポール・ラヴァティが取材で出会った若者で、主役に抜擢されたとのこと。
ローチ監督は、「ウイスキーは味わう以上に嗅ぐことが必要だと知った。これは気に入ったよ。アルコールとは、ただ喉に流し込むものではない。ただ意識を失わせるものでもない。念入りに味わうものなんだ」と話す。
コメディタッチの映画ではあるが、映画自体もなかなか味わいのある内容であった。27年間続いた映画館、銀座テアトルシネマのクロージング作品としてもふさわしい映画でしょう。
 
帰りに、かわいい天使がビルの横から覗き込んでいたのを後ろから撮った。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (カモシカ)
2013-05-19 23:30:07
>かわいい天使がビルの横から覗き込んでいたのを後ろから撮った
この1枚、いいですね!
つばささんの「天使の分け前」の映画評を読み、と銀座テアトルシネマ閉館と重ねると天使の言葉、心の内が聞こえてきそうです。
返信する
Unknown (つばさ)
2013-05-21 22:38:51
彫刻の天使は銀座の天賞堂の天使です。
ビルの角から覗き込んでいる姿が人間の子どもらしいです。
この映画をみたあとに、この天使を見ると、なんかつながりがあるのではないかと思ってしまいます。
返信する

コメントを投稿