おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

大統領の理髪師

2019-10-03 13:36:37 | 映画
「大統領の理髪師」 2004年 韓国


監督 イム・チャンサン
出演 ソン・ガンホ ムン・ソリ
   リュ・スンス イ・ジェウン
   ソ・ビョンホ パク・ヨンス
   チョ・ヨンジン

ストーリー
1960年代の韓国。
大統領官邸“青瓦台”のある町、孝子洞で理髪店を営むごく普通の男、ソン・ハンモは、近所の人々同様、大統領のお膝元であることを誇りに思い、時の政府を妄信的に支持し、熱烈さのあまり町ぐるみの不正選挙にも加担するほどだった。
新米助手のキムを無理やり口説いて結婚し、やがてはかわいい息子ナガンも生まれ、一家は幸せな毎日を送っていた。
そんな中、ふとした事件をきっかけに、彼は大統領の専属理髪師に選ばれるのだった。
町の人々は彼を羨むが、大統領閣下にかみそりをあてなければならない緊張感と、その上大統領府の権力争いで警護室長チャン・ヒョクスと中央情報部長パク・チョンマンの対立の中に置かれ、ハンモは危険この上ない。
ある日の夜、大統領府の後方の北岳山に北のスパイが潜入するが、しかしスパイは突然の下痢にしゃがみこみ、巡回中の軍人に見つかって銃撃戦となる。
この事件を契機に、政府は下痢を「マルクス」病とみなし、下痢の者をスパイと決めつけるようになる。
そんな時、ハンモの息子ナガンが下痢をしてしまい・・・。


寸評
これはソン・ハンモという平凡な一般市民の目を借りて描いた韓国の現代史映画だ。「シルミド」という少し前に見た映画が溶け込んできた。
面白い。面白い視点で描いた映画だと思う。
その面白さを理解するためには、少しは韓国の現代史を頭に置いておいたほうが良さそうだ。
描かれている時代背景はおおよそ以下のようなものだと思う。
1960年3月15日大統領選挙が行われ、李承晩大統領は不正な手段と暴力で権力を維持しようとした。
4月19日に政府の不正と腐敗に対する学生達の抵抗が最高潮を迎え、李承晩政権の崩壊という結果へとつながっていった。
1961年5月16日、朴正熙将軍は軍隊を率いて、4.19革命後に作られた文民政権を武力で倒す軍事クーデターを起こす。
1968年1月21日、数名の北朝鮮ゲリラ部隊が、当時朴大統領が住んでいたソウルの青瓦台を襲撃。部隊は青瓦台にかなり接近したが阻止された。
危機感を持った韓国は特殊部隊を結成し北への報復を計画するが、1971年8月23日に南北融和政策により特殊部隊が抹殺されるシルミド事件が起きる。
独裁者による長期政権は国民を圧迫し、韓国政府と合衆国の関係に悪影響を及ぼしていた。
1979年10月16日に釜山・馬山闘争が起き、政府は戒厳令を発令するが、対処方法をめぐって政府内の対立が表面化し、疎外されたと感じた中央情報部長・金載圭は10月26日朴大統領を暗殺。
この事件により朴政権は崩壊し、全斗煥に権力を握るチャンスを与えることになる。

韓国の歴代大統領は、李承晩 - 尹善 - 朴正熙 - 崔圭夏 - 全斗煥 - 盧泰愚 - 金泳三 - 金大中 - 盧武鉉 - 李明博 - 朴槿恵 - 文在寅と続いているが、描かれているのは朴正熙で、政権が崩壊するときの李承晩と、新大統領の全斗煥が少しだけ描かれている。
李承晩時代の四捨五入論や、北朝鮮のゲリラ進入事件を笑い飛ばして描いている。とにかく全編すべてを茶目っ気タップリに描いているのだ。頭が禿げ上がった全斗煥と思われる新大統領をハゲだと笑い飛ばして、理髪師が袋詰にされて放り出されるのは痛快の極みだ。その描き方は政治を小馬鹿にしたようなもので、すなわちこれは庶民の目を借りた政治映画だと思って僕は見ていた。

だけど、息子のナガンが拷問で足が不自由になって帰ってきてからは、これは一方では親子、家族の愛情を描いた映画でもあったんだとの思いも湧いた。
特に父親のソン・ハンモが全国の漢方医を捜し歩き、ついには息子のナガンを背負って雪解け水の川を渡って行くシーンなどは感動ものだ。
ラストシーンで二人の愛情の深さを確信させられて、政治の暗部に対する感覚ははどこかに飛んで行っていた。
これは韓国国民でない僕の感覚で、韓国の人にとっては見終わった時の感覚は、また違った感じだったのだろうかとふと思った。
今は韓流ブームで、よく似た恋愛物がテレビ各局から放映されているけれども、この映画も間違いなく韓国映画の一つなのだと思った。
それにしても、現大統領の文在寅は日本にとって最低の大統領だと思う。


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