「アデル、ブルーは熱い色」 2013年 フランス
監督 アブデラティフ・ケシシュ
出演 アデル・エグザルコプロス レア・セドゥ サリム・ケシュシュ
モナ・ヴァルラヴェン ジェレミー・ラウールト
アルマ・ホドロフスキー バンジャマン・シクスー
ストーリー
女子高生のアデルは上級生の男子とのデート中に街ですれ違った青い髪をした魅力的な女性に目をむける。
その後彼とSEXをするが、アデルはベッドの上で無表情なままで、何かが違うことに気づきだす。
彼とは別れることになり、その後友人のゲイ友達とバーに行き、男同士のキスを見せ付けられた。
いたたまれずその場をあとにするが、次に入ったバーでは女ばかりのバーで同性愛者のためのバーだった。
そのバーで以前見かけた青い髪の女性に声をかけられて話をする。
後日アデルが学校の前で友達と話をしていると、そこに青い髪のエマの姿があった。
ふたりはお互いをもっと知るために話をするが、アデルはすでにエマが好きになっていた。
アデルはエマを家に招待して両親にも紹介し、その夜アデルの家に泊まったエマと初めてのSEXをする。
そして、アデルは学校を卒業後小さなこどもを教える教師になり、エマは絵を描いていた。
ふたりは同棲していて、エマの仲間にアデルを紹介するパーティを開く。
そこはエマの美術仲間ばかりの世界でアデルは自分の居場所に戸惑っていた。
エマは絵のことで頭がいっぱいになり、アデルの求めに応じようとせず、アデルは孤独を感じるようになる。
そんな中アデルは仕事仲間の誘いを受け踊りに行き、男性教師の誘いにのってしまう。
そのことを知ったエマは激怒し、アデルを部屋から追い出してしまう。
そして時が経ち久しぶりに再会するふたり。
アデルは今でもエマを愛しているからどうか自分を受け入れて欲しいとせまる。
自分の足の間にエマの手を引き入れてキスをするアデル、エマも泣きながら人目も気にせず激しくキスをするが、エマにはすでにパートナーがいて、今でもアデルを許せないと告げる。
そしてアデルはひとり去っていく。
寸評
冒頭で女子高生のアデルは一目ぼれに関する授業を受けていて、その後に髪を青く染めた画家を目指す女性のエマに出会い一目ぼれする。
同性愛を描くセンセーショナルな作品だが、描かれている内容は純愛物語であり青春物語である。
異性との関係に興味を持つ年頃でもあるが、アデルは同じ女性のエマに好意を寄せる。
同性愛者の二人は関係を結ぶが、どうも二人の関係は続きそうもない雰囲気が出てくる。
アデルとエマの間ではそもそも生きている世界が違っているのだ。
愛があればと描かれることが多い青春映画だが、育ってきた環境や価値観の相違は埋めようもなく、二人の仲を引き裂く要因でもある。
付き合っている人種もレベルも違い、エマが芸術を通して知り合った人達は上流階級のインテリが多そうだ。
アデルはエマの友人の間で交わされる芸術論に加わっていけない。
途中から二人は自分たちの間に深い溝が横たわっていることを感じていたのではないだろうか
これを男女の関係で描いていたなら非常に分かりやすい。
僕はLGBTに関して偏見を持っていないが、そうではない僕は彼らの恋愛感情と行為が想像できないので、描かれている内容はセックスシーンだけでなくショッキングに感じる場面が多い。
それが僕を画面に引き付けるのだが、彼らが置かれた状況や心の内を描くためなのか一つ一つの場面の描き方が長くて少々まどろっこしく感じる。
この内容であればもう少し尺を短くすることができたのではないかと思う。
エマがアデルの家に招待された時に、アデルの父親が生活の安定を述べているが、そのような父の下で育ったアデルはやはり安定志向で公務員と思われる先生の道を選ぶ。
一方のエマは母の前夫の血を引いているのか自由を求める芸術家タイプで、母の再婚相手の義父もそれに理解を示している家庭環境と思われる。
相反する性格だから魅かれたのかもしれないが、その違いが二人を分かつことになったのだと思う。
エマは絵画制作に没頭し、常にかまってほしいアデルとの距離が出てくる。
アデルは淋しさのあまり同僚の男と関係を持つが、エマにはその事を言えない。
エマはアデルが男と関係を持ったことより、アデルが嘘をついたことに怒って家を追い出す。
どうしてもエマを忘れられないアデルは彼女を呼び出し気持ちを伝える。
二人は涙を流し抱擁し、アデルはエマに関係を迫るがエマは断る。
アデルはエマに一途の気持ちだったろうが、エマも新しいパートナーが出来たとはいえアデルへの気持ちは残っていたのだと思う。
それでもどうしようもない二人の関係を二人が流す涙で表現していた。
エマは展覧会にアデルを招待すると、アデルは青い服で現れる。
エマの青い髪との対比だが、アデルの青はエマの青よりも鮮やかなものである。
この強い青はアデルが強い大人になった事の象徴でもある。
凛として通りを歩く姿はエマとの決別を匂わせ、二人はもう交わることはないだろうと思った。
LGBTを真正面で捕らえていたので興味を引いたが、男女で描けばどおって事のない映画に思えた。
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