おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ダイ・ハード

2019-10-04 06:58:26 | 映画
「ダイ・ハード」 1988年 アメリカ


監督 ジョン・マクティアナン
出演 ブルース・ウィリス
   アラン・リックマン
   ボニー・ベデリア
   アレクサンダー・ゴドノフ
   レジナルド・ヴェルジョンソン
   ポール・グリーソン
   ウィリアム・アザートン
   ハート・ボックナー
   ジェームズ繁田

ストーリー
ニューヨークの刑事ジョン・マックレーンは、クリスマス休暇を妻ホリーと2人の子供たちと過ごすためロサンゼルスへやってきた。
ホリーは日本商社ナカトミ株式会社に勤務し、夫と離れこの地に住んでいるのだった。
ジョンは、クリスマス・イヴの今日、ナカトミの社長タカギの開いている慰労パーティに出席している妻を訪ね、現代ハイテク技術の粋を極めた34階建ての超高層ナカトミビルに向かうのだった。
ホリーは単身赴任によって、結婚と仕事の両立に苦しんでいたが、再会したジョンを目にすると改めて彼への愛を確認するのだった。
ところがパーティも盛りあがりをみせた頃、13人のテロリストがビルを襲い、事態は混乱を極める。
リーダーのハンス・グルーバーは金庫に眠る6億4000万ドルの無記名の債券を要求するが、タカギがそれに応じないのを見てとると彼を射殺してしまい、そしてその現場をジョンが目撃したことにより、彼とテロリストたちの息詰まる戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。
ジョンは機転をきかせ、パトロール中のパウエル巡査部長に事件の重大さを知らせ、援軍を求める。
その頃テロリストの一味であるテオが金庫の暗号の解読に成功し、債券はハンスたちの手に握られた。
また彼は、ホリーがジョンの妻であることをTV放送によって知り、彼女を人質にビルからの脱出を企てる。
しかし安堵するジョンとホリーを、1度は彼が叩きのめしたはずのテロリストの1人、カールが執念をもってジョン達を狙い1発の銃声が響きわたる・・・。


寸評
これは単なるアクション映画ではなく、アクション映画をアクション映画の域を超えた次元に導いた作品だ。
脚本は緻密でご都合主義的な展開を排除していて最後まで観客の目をそらさせない。
ジョン・マックレーンは確かに超スーパーマンのヒーローなのだが超人的ではない。
彼は裸足で行動しているのだが、敵側がその弱点を突きパーテーションのガラスを撃ちまくる。
マクレーンは足裏を血みどろにしながら逃げ、刺さったガラスの破片を抜き取りヘトヘトとなる弱みを見せる。
銃やナイフでやられるというのではなく、アナログ的ともいえるガラスの破片で傷つくというのが人間的でいい。
ガラスを狙うように指示するハンス役のアラン・リックマンが悪役リーダーとして優れた演技を見せている。
アルマーニを着こなし、おごれる日本人に天誅を下すと宣言する冷静で理知的なハンスは、マクレーンとの対峙において次第に醜悪な本性を表すようになっていくが、その変貌ぶりが無理のないもので存在感がある。

実行犯たちは粗野な連中が多く、彼等の行動目的が組み合わさって新たな状況を生んでいく展開がスピーディで息も飲ませないノンストップ・アクションとなっている。
ビルの構造を巧みに利用した「密室サスペンス」という側面を持たせながら、最後は「高層ビルの爆発」というスペクタクルへと観客を誘っていくのも素晴らしい構成だ。
後年、キアヌ・リーブス主演の「スピード」を撮ることになるヤン・デ・ボンが撮影を行っているが、彼のカメラも称賛されてよい。

ナカトミ・ビルの内部の状況から、ビルの外でのやり取りに移ると別の側面を見せ始める。
パトカーに乗って巡視しているアル・パウエル巡査がマックレーンと無線で連絡を取り合い心を通わせる。
そのパウエル巡査に高圧的な態度をとるのがロス市警察本部次長のドウェイン・ロビンソンなのだが、これが全くの無能力者でパウエルの意見を聞く耳を持たない。
後からやってきたFBI捜査官に「君はもういい」と除外されてしまうダメ管理職だ。
どちらもジョンソンと言う名の二人のFBI 捜査官は、自分達こそ優秀だと自負している思い上がり者で、テキパキと指示を出しているようだが、それはマニュアル通りという半端なエリートである。
マックレーンやパウエルのような優秀な下っ端に比べて、権力だけをちらすかせる無能なエリートという図式は、ありきたりだがスカッとさせる。
エリート意識を持っているのはナカトミの社員の中にもいて、重役のハリー・エリスは交渉にたけていると思い込んでいてマックレーンの正体を明かし殺されてしまう。
エリート拒否ということが3度も描かれているから、脚本のジェブ・スチュアートやスティーヴン・E・デ・スーザには、エリートに対する恨みがあったのかもしれない。

事件が解決したかと思えたところで、もう一波乱ある。
拳銃の超ドアップで始まる一連のシーンは雰囲気と迫力があって息をのませた。
本当にこの作品は息をのむシーンが多い。
ベートヴェンの第九「歓喜の歌」が効果的で、用いられている音楽はキューブリックへの「時計じかけのオレンジ」へのオマージュを感じる。


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