おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ファミリービジネス

2024-09-10 08:08:17 | 映画
「ファミリービジネス」 1989年 アメリカ


監督 シドニー・ルメット
出演 ショーン・コネリー ダスティン・ホフマン
   マシュー・ブロデリック ロザンナ・デ・ソート
   レックス・エヴァーハート B・D・ウォン

ストーリー
過越の祭の夜のこと、妻エレーン(ロザンナ・デ・ソートト)と共に彼女の実家を訪ねたヴィトー(ダスティン・ホフマン)は、息子アダム(マシュー・ブロデリック)と久しぶりに再会した。
一家が祝いの食卓を囲んでいた時、アダムあてに電話がかかってくる。
相手はヴィトーの父ジェシー(ショーン・コネリー)で、留置場に入っているという。
父から保釈金を借りて祖父を迎えに行くアダムは、父のヴィトーより祖父のジェシーを秘かに尊敬していた。
そんなジェシーにアダムは、研究開発中の酵素細胞とそのデータ・ブックを盗み出す泥棒計画を打ち明けた。
実はジェシーは、泥棒稼業で生計をたてていたのである。
早速ジェシーは孫の計画に乗ることにするが、それを知ったヴィトーは猛烈に反対する。
しかし絶対に裏切ることのない人間がもう1人必要というジェシーの説得に、ヴィトーは息子を守る口実で泥棒に加わることにした。
三人は問題の酵素細胞を盗み出すことに成功するが、データ・ノートを忘れたことに気づき、アダムが取りに戻ることになった。
しかし、これが命取りとなり、アダムが警察につかまってしまう。
そしてヴィトーはエレーンに促されるまま、アダムを守る為に事実を警察に告白する。
そして裁判の結果、アダムとヴィトーは執行猶予刑を宣告されるが、ジェシーは実刑判決をうけてしまう。
息子のために父を売ったとヴィトーを責めるアダムによって、2人の間には確執が残った。


寸評
ジェシーは60歳になった今でも腕っぷしが強く自由奔放な性格で、そんな男をショーン・コネリーが渋く演じ、受けるヴィトーのダスティン・ホフマンも流石と思わせる。
彼は息子のヴィトーと泥棒を繰り返していたようだが、ヴィトーは今では食肉店を経営し、妻と真面目な生活を送っている。
ジェシーには泥棒稼業の知り合いがいて、何かといえば「落ちていた」と言って盗品を持ってきて安価で売りさばいているのだが、その様子がおかしい。
葬儀の時でも同様で、その場には警官もいるのだが、彼らも落ちていたその品を買っているのである。
度々捕まっている彼には元警官や弁護士の友人がいる。
それらを描くことで、ジェシーは極悪人ではなく皆から慕われている人物を印象付けている。
更にそのことはジェシーと孫であるアダムの関係を補佐し、アダムと父親ヴィトーとの確執を補佐している。

100万ドルの報酬を得るために、誰も傷つけずに酵素細胞と研究データを盗むという犯罪映画なのだが、犯罪のサスペンス性よりも父と息子の確執と雪解けを描いた親子の物語となっている。
その親子関係が祖父と父、父と息子という二組の親子の関係で描いているのが作品を面白くしている。
泥棒を手伝わされていたヴィトーは、息子には自分と同じ道を歩かせたくないとの親心がある。
アダムに対しては教育熱心でもあったのだろう。
そのこともあってか、アダムは成績優秀で大学では奨学金を受け将来が約束されている。
しかし、アダムはそのことが不満で大学を中退してしまっている。
アダムは、ジェシーとヴィトーの親子関係における息子ヴィトーがジェシーによって自由な少年時代、青春時代を過ごさせてもらってきたと感じている。
アダムは自分の同時代は父によって強いられたものだと思っていて、その不満が祖父ジェシーへの憧れとなることで、アダムには父ヴィトーがダメな父親となり、息子がそう感じていることを母親のエレーンも分かっているのだ。
楽しいはずの年代を楽しめなかったことが確執の奥にある。
息子を思っての期待は、時として息子を苦しめているのかもしれない。
期待は裏切られるものでもあると劇中でも述べられている。
しかしそのことを責められても、父親としては辛いものがある。
自分が果たせなかった夢を息子に託したいだろうし、自分が味わった辛い思いを息子にはさせたくないという気持ちも十分すぎるくらい分かる。
終盤になって100万ドルの報酬が得られる強奪の真の目的が明らかにされるが、サスペンスを追求した作品ではないので、その事は劇的な解決に向かうものとはならない。
むしろ母親が息子にかける特別な愛情が描かれ、母親にとっては元は他人の夫より、お腹を痛めた息子の方が大切なのだと知らされる。
そしてそのことが更に息子が父親を嫌悪する要因となっていく負の連鎖だ。
ジェシーの死によってヴィトーとアダム父子は和解したようだが、その感情変化は深く描かれていないので少々唐突感がある。
最後もそうだが、葬儀の場で歌われる「ダニー・ボーイ」はジーンとくる。