おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

一条さゆり 濡れた欲情

2020-10-22 07:55:11 | 映画
「一条さゆり 濡れた欲情」 1972年 日本


監督 神代辰巳
出演 一条さゆり 伊佐山ひろ子 白川和子 粟津號
   高橋明 小見山玉樹 中平哲仟 小沢昭一
   絵沢萠子 中田カフス 中田ボタン

ストーリー
大阪の下町野田にある吉野ミュージック劇場での一条さゆり(本人)の引退興行には、若いストリッパーはるみ(伊佐山ひろ子)も出演していた。
はるみは関西ストリップの女王・一条さゆりに対抗意識を燃やす新人ストリッパーで、レスビアンショーから脱皮し一人立ちするという目的がある。
そんなはるみにはやくざの恋人大吉(粟津號)がいた。
はるみはレズショウのコンビであるまり(白川和子)にコンビの解消をせまるが、まりのヒモである勇(高橋明)はめしの食いあげだと反対した。
一度言い出したらあとには引かないはるみに怒った勇は、はるみを殴り倒す。
そんな勇を大吉はドスで刺し、刑務所へ入る。
やがてはるみは必死にローソクショーに取り組み、一本立ち出来るストリッパーに成長していった。
そして吉野ミュージック一条さゆり引退興行へ出演することになったのである。
さゆりは次々とおハコの“花笠お竜”“緋牡丹お竜”“ローソクショー”を演じ、ラストのオープンをした瞬間、フラッシュがたかれた。
曲の終了後、刑事に踏み込まれさゆりは楽屋で逮捕され、はるみもまた逮捕された。
現在一条さゆりは引退し、ささやかにすし屋を開きながら、被告として裁判を待っている。


寸評
猥褻物陳列罪で何度も警察に検挙されながら、毅然と最後の舞台に立つ関西の名ストリッパー一条さゆり狂言回しに使っている。
タイトルとは違って事実上の主人公と言えるのが、一条に張り合う伊佐山ひろ子演じる新人ストリッパーのはるみである。
何とか彼女の芸を盗もうとする踊り子と、いちずに尽くすヒモの哀しみやおかしさがなんとも言えない。
ワーンピースをだらしなく着こなして、日傘をさしながらだらしなく歩く伊佐山の後ろをついてくるヒモの粟津・・・。
やっぱり映画はファーストシーンがドキドキする。

はるみは表向きはおべんちゃらを言いながら、陰では悪口を言いまくる。
ライバル心から一条の草履を隠したり、楽屋の鏡に落書きしたりするが、本心では一条に憧れているのが分かる。
見方によってははるみは一条その人なのかもしれない。
一条は権力への反抗心が根底にあった人だと思う。
安っぽい服を着ているケチで男にだらしない女を演じた伊佐山ひろ子が抜群に上手い。
初期のロマンポルノの傑作である。

公然猥褻罪で上映禁止作を出していた日活が、これまた公然猥褻罪で逮捕される事になる、現存の一条さゆりを引っ張り出してくるところなどは喝采物だ。
一条さゆりは吉野ミュージックの花形スターで、その舞台は大衆演劇の雰囲気があった。
引退される頃はだいぶとお年をとられていたと思うが、その演技は迫真(?)のものがあった(ご当人は演技ではないと言っておられたのを聞いた事がある)。
僕の学生時代にはそこそこあったストリップ劇場は次々閉館していき、大阪の野田にあった吉野ミュージックも今はない。
お世話になった東洋ショー劇場は今のところまだ存在している。
特集上映など精力的な活動をしておられる「シネ・ヌーヴォ」さんに行った時に、近くにある九条OS劇場がどうなっているか行ってみたが、当時とは違うひっそりとした入り口であった。
ストリップ劇場は消えゆく文化なのかもしれない。

ロマンポルノが世に送り出した一番の監督がこの神代辰巳ではないだろうか?
その後も色々撮っているが圧倒的にロマンポルノの作品群に面白いものがあるように思う。
宮下順子さんなんかを使った作品なんて傑作がずらりと並んでいる。


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