おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

次郎長富士

2023-12-06 07:12:28 | 映画
「次郎長富士」 1959年 日本


監督 森一生
出演 長谷川一夫 市川雷蔵 京マチ子 若尾文子
   山本富士子 勝新太郎 根上淳 鶴見丈二
   本郷功次郎 船越英二 黒川弥太郎 中村玉緒
   林成年 品川隆二 滝沢修 小堀阿吉雄
   清水元 伊沢一郎 本郷秀雄 杉山昌三九

ストーリー
次郎長は子分・桝川仙右衛門(島田竜三)の兄を殺した小台小五郎(尾上栄五郎)の引渡しを頼みに武井安五郎(香川良介)の所へ行ったところ、ちょうど居合せた黒駒の勝蔵(滝沢修)は含むところがあって小五郎と仙右衛門の一騎討ちを計った。
仙右衛門は小五郎を倒したが、神域を血で汚したという理由で次郎長の身辺に役人の手が回る。
次郎長は旅に出ることになり、夫の身を案じるお蝶(近藤美恵子)が石松(勝新太郎)を供に後を追った。
酒を止められていた石松だが、お新(山本富士子)と飲み比べをして酔いつぶれ、金をとられてしまう。
道中でお蝶は発病、途方にくれたとき通りかかったのが、以前世話をした豆狸の長兵衛(伊沢一郎)で、彼の家に厄介になることになった。
そのころ次郎長の泊った旅籠・大野鶴吉(鶴見丈二)の家では、鶴吉の許婚・お妙(浦路洋子)に土地の代官が横恋慕し、妾によこせとの無理難題に、怒った鶴吉が代官屋敷に乗り込むという事件が起っていた。
それを聞いた次郎長らの大暴れに代官は平あやまりに謝った。
日ましに上る次郎長の人気に業をにやした黒駒勝蔵は、浜松の大貸元・和田島太左衛門の跡目相続の席で憤まんを爆発させ、華やかな宴席が修羅場となりかけたとき、和田島の二代目おかつ(京マチ子)が割って入り仲裁し事なきを得たが勝蔵の憤りはつのり、彼は武井安五郎に府中の盆を盗ませた。
これを知った清水の二十八人衆は安五郎の賭場になだれこみ、民家にかくれた安五郎を斬り倒した。
が、このとき勢い余ってその家を焼き、これが次郎長の怒りにふれ、大政(黒川弥太郎)らは、お蝶の配慮で吉良の仁吉(市川雷蔵)のもとへワラジをぬぐことになった。
仁吉の家では、荒神山の盆割りを無法にも安濃徳(小堀阿吉雄)に奪われた弟分の神戸の長吉が泣きついきたので、仁吉は恋女房おきく(若尾文子)が安濃徳の妹であるため、おきくを離縁、清水28人衆と長吉に力をかすことに・・・。


寸評
大映版の清水の次郎長物で次郎長、森の石松、吉良の仁吉を中心にしてダイジェスト的に清水一家の活躍が描かれるが、オールスター作品らしく看板スターがわずかな登場シーンで出演している。
男性映画なので女優陣にその傾向がみられ、石松に絡むのが色気を振りまき酒がめっぽう強いうわばみお新の山本富士子 、次郎長と黒駒の勝蔵の一触即発を止めるのがおかつの京マチ子、吉良の仁吉の女房おきくが若尾文子なのだが、それぞれちょっとしたエピソードで登場しているだけとなっている。
後に勝新太郎夫人となる中村玉緒はまだ駆け出し中で、仲居の役で勝新太郎と少しだけ絡んでいるのが今となっては面白い組み合わせだ。
次郎長一家の小政、桶屋鬼吉、大瀬半五郎、法印大五郎、追分三五郎などが当然画面を賑わすが、特に目立ったところはなく集団の中の一人という感じだ。
わずかに目立つのは桶屋の鬼吉が自分の棺桶を担いで黒駒勝蔵のところへ喧嘩状の返事を持っていくぐらい。
むしろ敵方である小岩の根上淳の方が目立っている。

小説や講談で語られる主なエピソードは形を変えながら描かれていると思うが、マキノ雅弘の「次郎長三国志」における描き方と比べるとどちらが本当か僕は知らないでいる。
こちらの作品では、お蝶は病気を回復し清水に帰ってきているし、百姓家を燃やしてしまう一件も次郎長方のやらかしたことになっている。
次郎長が渡した金は見舞金でなく、お詫びの金だった。
石松が次郎長の刀を金毘羅さんへ奉納するエピソードも描かれているが、一般的に語られているだまし討ちに会ってあって石松が殺されてしまうという風にはしていない。
「次郎長三国志」では描かれなかった荒神山の出入りが描かれていて、吉良の仁吉はここで落命する。
しかしいくら草鞋を脱いでいたとはいえ、吉良の仁吉の亡骸が次郎長一家にあるというのはどうなんだろう。
それとも子分も多数死んで仁吉一家は解散したので、しかたなく亡骸を次郎長一家が引き取ったのだろうか。

最後はこれも「次郎長三国志」では描かれなかった黒駒の勝蔵との一大決戦だ。
黒駒は400人、次郎長は100人という出入りだが、決戦場所は富士川である。
富士川と言えば平安時代の後期に源頼朝と平維盛が戦った源平合戦、富士川の戦いが思い起こされる。
森一生演出は多分にこれを意識していると思われる。
東に陣取ったのは次郎長方で白旗をなびかせている。
一方西に陣取ったのが黒駒の勝蔵方で赤旗をなびかせている。
それはまるで源氏の白に、平氏の赤を表しているようで、戦う前から白の勝ちを暗示していたようなものだ。
もっとも主人公は清水の次郎長なのだから観客は白組の勝ちを初めから知っていることになる。
娯楽作品として軽妙なシーンを盛り込みながら楽しく見せているが、一番の功績は懐かしい往年のスターを垣間見ることが出来ることで、ぼくにとっては、一度はリアルタイムで見たことのある映画スターたちの若かりし頃を再見できることだ。


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2 コメント

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『続次郎長富士』は (サシダフミオ)
2023-12-09 21:07:37
続編で、勝新の石松は、殺されてしまうのですが、それはまるでワイダ監督の『灰とダイヤモンド』のラストのようにいやいやをしながら死にます。
勝新の趣味がよく分かりますね。
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まさに大映 (館長)
2023-12-10 07:22:54
長谷川一夫、市川雷蔵、京マチ子、若尾文子、山本富士子、勝新太郎とくれば、まさに大映ですね。
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