おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

人生に乾杯!

2023-12-07 06:50:58 | 映画
「人生に乾杯!」 2007年 ハンガリー


監督 ガーボル・ロホニ     
出演 エミル・ケレシュ  テリ・フェルディ
   ユーディト・シェル ゾルターン・シュミエド

ストーリー
ヨーロッパの小国ハンガリー。
社会主義国だった1950年代に運命的に出会い、身分の差を乗り越えて結ばれたエミル(エミル・ケレシュ)とヘディ(テリ・フェルディ)。
それから幾年月が経ち、いまでは81歳と70歳の老夫婦となったふたり。
世の中もすっかり様変わりし、年金だけでは生活が立ち行かず、借金の取り立てに追われる無慈悲な老後を送っていた。
そんなある日、ふたりの出会いのきっかけとなったヘディの大切なイヤリングまで借金のカタに取られる事態に。
自分の亭主関白を反省し、高齢者に冷たい世の中へ怒りを感じたエミルは郵便局で紳士的な強盗を働く。
続いてガソリンスタンドを襲うが、その姿が防犯カメラに映ってしまう。
夫が犯人だとは信じられないヘディは警察の捜査に協力する。
しかしヘディは奮闘する夫の姿にかつての愛情を取り戻し一緒に逃げる決心をする。
2人は紳士的な強盗を繰り返しながら、時代物の車チャイカで警察の手をかいくぐっていく。
自分たちの正義のために行動する彼らに共感した老人たちは立ち上がり、町には模倣犯が溢れ出す。
2人は、エミルのかつての友人で、キューバからの移住者であるホアンの家に身をひそめるが、警察に居場所を知られてしまう。
そしてバスで家の塀を破って強行突破しようとして、女刑事のアギ(ユディト・シェル)を轢いてしまう。
エミルたちは動揺し、アギを連れて逃走する。
アギの恋人で刑事のアンドル(ゾルターン・シュミエド)は、彼女を救うため捜査に加わる。
自分を看病するヘディの優しさに触れたアギは、次第に夫妻との距離を縮めていき、なぜ彼らが強盗を働いたのかを知ろうとする。
30年前、夫妻の息子アティラが自転車旅行に出かけようとして、軍用トラックにはねられるという事件があった。
そして一行は、息子が眠るパイオニアキャンプ場に向かう・・・。


寸評
エミルの妻へディを演じたテリ・フェルディがすこぶる良い。
夫に感謝し、夫を支え、夫と共に生きるしっかり者の妻を自然体で演じていた。
彼らはふとしたことで夫婦となったことは暗示的に描かれているが、その後の二人の人生はどうであったかは不明で、ただ今は年金生活者として最下層の生活をしているらしいことは推測される導入部であった。
年金だけの生活だと洋の東西を問わず同じなのかと、もうすぐ年金だけの生活者になる私としては身につまされる思いがした。
それでも彼らのような尊厳だけは失くしたくないものだと勇気づけられもした。
クイズ番組の答えをさりげなくささやいたり、書棚には書物がずらりと並んでいたりするので教養は高そうな紳士であることが想像できる。
そして年老いても彼らのようないたわりの気持ちを持って過ごせたらいいなと思うのである。
なぜなのだろうな?
老女のへディがキャリア刑事のアギの妊娠を察知して介護してやるシーンにこみ上げるものがあった。
すれ違いを起こしているアギとアンドルが対比的に描かれ、その描かれ方に少し物足りなさを感じていたのだが、見終わってみるとそのもの足りなさも、かえって色々と想像をさせて逆に監督の意図したものだったのかも知れないなと思ったりもした。

ソ連製の車がいい効果を生み出している。
通称「チャイカ」と呼ばれているらしいこの車は、馬力だけは強そうで人が滑り落ちる小石の山を上っていく。
主人公の老人は共産党の元運転手だけあって、年老いたとはいえその運転テクニックは衰えを見せず、追跡車両と互角以上の走りを見せる。
この車と運転手の取り合わせが実に愉快であった。

彼らは海を見る旅に出たことが暗示される。
それがこの映画に希望を見出させて余韻をもたらせていた。


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