おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

家族ゲーム

2019-03-11 06:43:15 | 映画
「家族ゲーム」 1983年 日本


監督 森田芳光
出演 松田優作 伊丹十三 由紀さおり
   宮川一朗太 辻田順一 松金よね子
   岡本かおり 鶴田忍 戸川純
   白川和子 佐々木志郎 伊藤克信
   加藤善博 土井浩一郎 植村拓也
   前川麻子 清水健太郎 阿木燿子

ストーリー
中学三年の沼田茂之は高校受験を控えており、家中がピリピリしている。
出来のいい兄の慎一と違って、茂之は成績も悪く、今まで何人も家庭教師が来たが、誰もがすぐに辞めてしまうほどの先生泣かせの問題児でもある。
そこへ、三流大学の七年生、吉本という男が新しく家庭教師として来ることになった。
最初の晩、父の孝助は吉本を車の中に連れていくと、「茂之の成績を上げれば特別金を払おう」と話す。
吉本は勉強ばかりか、喧嘩も教え、茂之の成績は少しずつ上がり始める。
茂之は幼馴染みで同級生の土屋にいつもいじめられていたが、勉強のあと、屋上で殴り方を習っていた甲斐があってか、ある日の放課後、いつものように絡んでくる土屋をやっつけることが出来た。
そして、茂之の成績はどんどん上がり、ついに兄と同じAクラスの西武高校の合格ラインを越えてしまう。
しかし、茂之はBクラスの神宮高校を志望校として担任に届け出る。
これに両親は怒り、志望校の変更を吉本に依頼する。
吉本は学校に駆けつけると、茂之を呼び出し、担任の前に連れていくと、強引に変更させる。
腐れ縁で結ばれていた土屋は私立高校に行くことになり、茂之は西武高校にみごと合格した。
吉本の役目は終り、お祝いをすることになった。
その席で、孝肋は、最近ヤル気を失くしている慎一の大学受験のための家庭教師になって欲しいと話す。
しかし、一流大学の受験生に三流大学の学生が教えられるわけはないと吉本は断った。
そして、吉本は大暴れをして食事は大混乱となるのだった。


寸評
生活の中で家族を感じさせるのは一家だんらんの食事時である。
そこではテーブルをはさんで色んな話題が提供されて会話が弾み、そして家族が和み安らぎを覚える。
しかし沼田家のテーブルは横長で、家族が一列に並んで食事をとるので話は一方的だ。
誰がこのアイデアを思いついたのか、森田監督の指示だったのかは知らないが映画の中では象徴的である。
この映画を代表するイメージにもなっている。
冒頭から一人ひとりの食事シーンと共にキャスト名が表示されるが、食事の効果音が誇張されて各人の性格を想像させる。
作品中で描かれる食事シーンは滑稽なシーンばかりで、一家だんらんの象徴を笑い飛ばしているようだ。
受験生を抱えて普段と違う状況に置かれている家庭だが、そんな時期にピリピリするのは沼田家に限ったことではなく、少なからずどの家庭でも経験している、あるいは経験したことだ。
森田芳光監督はそんな家庭の出来事を、非日常的な会話と出来事で笑いを誘い、ブラックジョーク満載の傑作コメディに仕上げていて、森田監督の最高傑作はこの作品だろう。

登場人物がおかしくて、キャラクターが際立っている。
家庭教師の吉本は登場シーンから変な行動をするし、大学7年生でいつも植物図鑑を抱えている。
この吉本を演じた松田優作の所作と言い方がとてつもなくユニークで面白い。
伊丹十三の父親は元々不思議な味を持つ彼のキャラクターを生かしたもので、目玉焼きを「ちゅうちゅう」と言ってすすりながら食べるのがおかしい。
それに輪をかけるのが母親で、実におっとりとした話し方をするどこか頼りない母親を、歌手である由紀さおりが彼女のキャラを生かして好演している。
由紀さおりがこんなに芝居ができるのかと驚かされたし、ラストシーンの表情もいい。
兄である慎一はまだまともな方で、問題児である茂之の宮川一朗太と松田優作の掛け合いは、まるで上質な漫才を見ているようである。
宮川一朗太、一世一代の演技かも知れない。

思わず笑ってしまうシーンはどれもこれも強烈な印象を残す。
冒頭で茂之が仮病で学校を休むシーンでの母親とのやりとりや、個人面談での先生とのやり取りは序の口。
父親から成績を1番上げてくれたら1万円出すと言われた時の吉本の態度。
車で話し合う時の「まさか化粧するんじゃないだろうね」と言われた由紀さおりの表情。
挙げたらきりがない爆笑シーンの連続だが、何かしらの問題提起を含んでいるので単なる喜劇とはしていない。
出来の悪い子ほど可愛いとはよく言われることだが、出来のいい兄は構ってもらえない淋しさを内在させている。
吉本が屋上で茂之に喧嘩の仕方を教えているときに、天体望遠鏡を持ってきた兄の慎一が二人に近寄っていく行為は自分もその中に加わりたい気持ちの表れだったと思う。
そのように何かしらの問題などを感じさせるシーンがユーモアを加味されて随所に散りばめられている。
最後に吉本がこの家庭の学歴偏重主義、人任せにする無責任さを蹴散らすように食卓テーブルを無茶苦茶にし、全員をノックアウトして立ち去る。 松田を優作は上手い!


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