おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

アフタースクール

2019-01-10 10:35:01 | 映画
「アフタースクール」 2008年 日本


監督 内田けんじ
出演 大泉洋 佐々木蔵之介 堺雅人 常盤貴子
   田畑智子 北見敏之 大石吾朗 奥田達士
   尾上寛之 桃生亜希子 沼田爆 田村泰二郎
   ムロツヨシ 佐藤佐吉 山本圭 伊武雅刀

ストーリー
母校で働く中学教師・神野(大泉洋)は、夏休み中も部活動のために出勤していた。
そんな彼のもとに、同級生だったという探偵(佐々木蔵之介)が訪ねてきて島崎と名乗るが、神野はほとんど覚えていない。
探偵は、やはり同級生の木村(堺雅人)を捜していた。
神野と木村は中学時代からの親友で、今朝も産気づいた木村の妻(常盤貴子)を、仕事で忙しく昨夜から全くつかまらない木村の代わりに病院へ連れて行ったばかりであった。
神野がそう探偵に告げると、今朝撮ったという1枚の写真を渡される。
そこには若い女(田畑智子)と親しげにしている木村が写っていた。
ショックを受けている神野に、探偵は木村捜しを手伝ってほしいと頼む。
まず、神野は顔が知られている探偵の代わりに、木村の件を探偵に依頼してきた男を尾行する。
男は、木村が勤める梶山商事の上層部の人間で、その背後には社長(北見敏之)の存在があることが明らかになり、また彼らは探偵もよく知るヤクザの片岡(伊武雅刀)と繋がっていた。
さらに捜索を続けていると、片岡が自身の経営する高級クラブで働いていた女・あゆみの行方を捜しているという情報が入り、そのクラブは梶山商事の人間が頻繁に利用していたことがわかる。
そしてそのクラブに勤めていたという女を訪ねたところ、あゆみが消えた日に木村が店に来ていたとの情報を得る。
探偵は、ヤクザの女に手を出した木村が、女房子どもを捨てて、女と一緒に逃げたのだと言うのだが・・・。

寸評
京極夏彦が著した「巷説百物語」を読んだような気分にさせられた映画だった。
ストーリー立てがその様な構成だった。
なるほど、なるほどと読んでいって、最終章で実は・・・と明かされて、なーんだそういうことだったのかといった展開。
見終わると、あーそういうことだったのかという見事に騙された爽快感を感じさせてくれた。
面白さの要因は、緻密に構成されたオリジナル脚本につきる。
内田けんじ監督は前作の『運命じゃない人』で監督としての才能だけでなく、並々ならぬ脚本力を見せつけてくれたが今回もその脚本力は健在だった。

エンドロールが出たところで、「あれれ、あの男はどうなったの?これで終われば、あれも騙しだったの?」と思っていたら、最後の最後にそのシーンがあって、これは騙しでもないんだから、そりゃそうだよなと納得した。
ただしその男が絡んでくることは事前に刑事のひとりに「○暴なんか関係なくて使われてるだけよ」というヤクザの片岡との会話で説明されていて、このあたりの細やかな演出にうならされる。

見終わると冒頭の回想シーンもそれに続く家族シーンの意味がじんわりと解ってくる。
会話の一つ一つの意味も納得できて、映画を回想すればするほど、その小さな挙動や話の内容や出来事の一つ一つが、パズルを解くように紐解かれていって、その発見に喜々とする自分を発見する稀有な作品だった。
物語の前半、観客は、神野と島崎の常識が打ち砕かれる状況に何度も付き合うことになるが、後半の信じられない展開に備えて、小さな小道具や何気ないセリフに気を配っておかねばならない。
彼らが見聞きしたものには、実はまったく違う意味があって、それが真実への新しい道を“木村探し”という地図に書き加える。
車の中にあった指輪の本当の役割を知る頃には、すっかりこの映画の虜になってしまっているのだ。
映画の最後に、全てが明かされたときの快い快感は、実は物語はシンプルで前向きなものだったのだと気付かせてくれる。

神野先生に「どこのクラスにもお前みたいな奴がいる。学校なんて関係ないんだよ。お前がつまんないのはお前のせいなんだ」と叫ばれる島崎が、自分の手下と思っていた男に裏切られ、騙したと思ってた男に実は騙されていたのは、この男は案外といい人間なんでないかと僕には思えて、極悪人が登場しない、なんだかほのぼのとした映画だったと思えた。

この映画がテレビ放映されるようなことがあっても茶の間で見ない方が良いと思う。
ちょっと見逃したり、聞き逃したら、後半で起きることの意味がわからなくなってしまうと思う。
録画でもして、一人静に見る作品だと思う。
監督が脚本も担当する作品が少なくなっているだけに内田けんじは注目すべき監督兼脚本家だとも思う。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿