「ファーナス/訣別の朝」 2013年 アメリカ
監督 スコット・クーパー
出演 クリスチャン・ベイル ウディ・ハレルソン ケイシー・アフレック
フォレスト・ウィテカー ウィレム・デフォー ゾーイ・サルダナ
サム・シェパード デンドリー・テイラー ビンゴ・オマリー
ストーリー
アメリカ・ペンシルベニア州の田舎町ブラドックは溶鉱炉(ファーナス)が立ち並ぶさびれた鉄鋼の町で、不況の波が押し寄せていた。
ラッセル(クリスチャン・ベイル)は白煙を吐き出す溶鉱炉が立ち並ぶこの町で生まれ育ち、老いた父の世話をしながら製鉄所で働いていた。
恋人リナ(ゾーイ・サルダナ)の存在を励みに、貧しくも真っ当な人生を送っていた。
そんな彼の気がかりは、イラクから帰還した弟ロドニー(ケイシー・アフレック)。
仕事もせずにギャンブルに手を出して借金を重ねていた。
問題ばかりを起こす弟の尻ぬぐいに奔走するラッセルだったが、不注意で人身事故を起こしてしまい収監されてしまう。
数年後、ラッセルがようやく出所したとき、彼がギリギリで守ってきた平穏な生活は跡形もなく消え去っていた。
寸評
重い話に重厚な音楽が重なる重たい映画だ。
物語の場所は不況に苦しむ工場地帯で、赤茶けた製鉄所の風景が時折挿入され映画の雰囲気を醸し出していた。
前半はそこで暮らす最下層と思われる人々の姿が描かれる。
主人公ラッセルは家族思いのまじめな男である。
父親を敬愛し、弟のことを気にかけて秘かに彼の借金を肩代わりしてやるような所が有る。
彼の真面目さは鹿狩り場面でも証明されている。
貧しい暮らしだが必死に生きているということが分かる。
弟のロドニーはイラクに何回も派遣されて心を病んでしまっている。
国のために命をかけて戦ったのに、国は自分に一体何をしてくれたのだとの思いが有る。
彼はまともな仕事に就けなくなっていて、そのことが後半の事件に関係してくるのだが、まともな仕事に着こうとした矢先なだけに切ないものが有る。
最後のラッセルの行動は弟の復讐による憎しみの感情だけではなかったように思う。
彼は報われない人間で、一生懸命働いているが裕福に離れないし、飲酒運転事故で刑務所行きとなる。
その間に敬愛する父親は死亡し、恋人は警察官の元へ走っている。
そして弟の事件に出くわす。
ついていない男はどこまでもついていないのだ。
まるで負の連鎖を背負って生きているようでもある。
そうした積み重ねの人生において自分ではどうにもならないものを感じた怒りの行動だったようにも思えるのだ。
救われない人間を描いた重厚な人間ドラマで、見終わった後場内が明るくなった時にフーッと大きく息をした。
エンタメ性に富んだ犯罪映画ではないが、ぐぐっと引き込まれる作品だった。
出演者は皆渋い。上手いキャスティングだ。
見応えのあるアメリカ映画である。
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