おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港

2023-12-01 07:34:38 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2019/6/1は「ゴッドファーザー」で、以下「ゴッドファーザーPART II」「ゴッドファーザーPART Ⅲ」「GONIN」「この愛のために撃て」「この国の空」「この世界の片隅に」「ゴーストライター」「恋の罪」「絞首刑」と続きました。

「次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港」 1953年 日本


監督 マキノ雅弘
出演 小堀明男 河津清三郎 田崎潤 森健二 田中春男
   石井一雄 森繁久彌 小泉博 加東大介 広沢虎造
   久慈あさみ 若山セツ子 豊島美智子 小倉俊子
   澤村國太郎 千葉信男 小川虎之助 石黒達也

ストーリー
次郎長一家の引越し祝にと三保の豚松(加東大介)なる漁師がやたらに魚をもち込んでくる。
子分になりたいのである。
土地の堅気は子分にしない建前から次郎長(小堀明男)は彼を追いかえす。
折しも清水にのりこんできたのは森の石松(森繁久彌)と追分三五郎(小泉博)。
三五郎の口利きで道倒れの力士、八尾ケ岳(千葉信男)一行を助けるため、次郎長は相撲興行をする。
人並外れた大飯食いを多勢あずかってお蝶(若山セツ子)は一苦労である。
興行と同時に催した花会は次郎長の名の売れようのバロメータアであったが、諸国の大親分が続々集り、一家の者を有頂天にさせた。
興行の方では、八尾ケ岳を負かせば金十両の賞金を出すという三五郎の派手な呼込みにつられて飛入りした豚松が怪我の功名で相手を負かしてしまったが、三五郎はそんな金はやれないと木戸銭をもって石松と小屋から逃げ出してしまう。
一方の豚松は約束の金十両をくれと次郎長宅に談じ込む。
落度をみとめて金を渡した次郎長の態度に豚松は大感激、またしても子分にしてくれと頼み入る。
一方石松、三五郎らは興行の上り金をもって帰る途中、例の黒駒勝蔵(石黒達也)の代貸大岩(鴨田清)らに斬りつけられ、金をもったまま三五郎ははぐれてしまう。
これを盗みの上の逐電と誤解した石松や桶屋の鬼吉(田崎潤)らは三五郎を追いかけて斬合いとなるが、お仲(久慈あさみ)の仲裁で喧嘩は次郎長にお預けとなった。
清水の次郎長は彼を子分にするが、これが江尻の大熊(澤村國太郎)との縄張りにからむ黒駒の勝蔵の感情を刺戟した。
喧嘩支度に身を固めた黒駒一家は甲州から清水におしかけてくる。


寸評
今回の狂言回しを加藤大介の豚松がつとめている。
旅を続けていた次郎長一家がついに家を持ち一家を構える。
引っ越し祝いの料理に絡んで漁師の豚松が登場するという段取りであるが、豚松は母親にまったく頭が上がらず許嫁もいるのだがバクチ打ちに憧れている軽薄な男で、どこか石松に似たような所がある。
一家の者ははみ出し者ばかりだが、豚松は漁師という堅気の人間であることが他の者たちと違う点で新たなキャラクターの登場となっている。
次郎長一家に森の石松と追分の三五郎が加わり勢揃いとなっているが、馴染みのある小政や大瀬の半五郎がいないのはどうしたことか。

三五郎の口から出まかせの呼び込みでひと悶着が起きるのだが、三五郎の小泉博は二枚目役を一手に引き受けていて、自信たっぷりに「オイラに惚れちゃいけないぜ」とキザなセリフを吐く。
鬼吉、綱五郎が思いを寄せるお千ちゃんもまんざらでなさそうで、三角関係ならぬ四角関係が勃発するのかと思っていたが、そちらの展開は膨らむことはなかった。
当の三五郎はお仲に気があるようなのだが、石松ともどもそちらもお仲が無関心なこともあって進展はない。
投節お仲といい、お千ちゃんといい、亡くなったおもとといい、あるいは豚松の許嫁のお静といい、出てくる女との浮いた話がまとまることはなく、男たちはやんちゃ坊主のようにはしゃぎまわっている。
「勢揃い清水港」のサブタイトルが示す通り、次郎長の女房お蝶や、料理屋のお千ちゃんなどが復活登場し、ちゃんとしたセリフもあるのがシリーズを見てきた者としては嬉しい。

一家を構えた次郎長一家はついに黒駒勝蔵一家との出入りに突入する。
シリーズ始まって以来初めてと言っても良い一家挙げての大立ち回りが展開される。
リアルな斬り合いではないが殺陣師の面目躍如という乱闘場面がいい。
人数劣勢の次郎長一家のメンバーに女性のお蝶やお仲まで加わっての殴り込みシーンなのだが、投節お仲が時々映るのにお蝶が全く映らないのは片手落ちの感ありだ。
たしか待ち受けた時には一瞬身構えるお蝶が映っていたように思うのだが・・・。

立ち回りははしゃいでいるようなもので壮絶感や鬼気迫るものではない。
大政が得意の槍をふるって相手を突きさす場面もないし、石松や三五郎が相手を斬り倒していくような演出も見られず、集団対集団の乱戦模様を撮り続けている。
だから尚更投節お仲の決まったポーズが目に付いた。
そして勝ち誇った次郎長一家は「わっしょい、わっしょい」とかけ語を合わせて黒駒一家を追い立てていく。
このシリーズでは「わっしょい、わっしょい」という掛け声をよく耳にする。
「次郎長三国志」シリーズは、お祭りのような若者による大はしゃぎ映画なのだろう。