おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

世界の中心で、愛をさけぶ

2023-12-13 07:36:33 | 映画
「世界の中心で、愛をさけぶ」 2004年 日本


監督 行定勲
出演 大沢たかお 柴咲コウ 長澤まさみ 森山未來 山崎努
   宮藤官九郎 津田寛治 高橋一生 菅野莉央 杉本哲太
   古畑勝隆 内野謙太 宮崎将 マギー 大森南朋
   天海祐希 木内みどり 森田芳光 田中美里

ストーリー
朔太郎(大沢たかお)と婚約した律子(柴咲コウ)は、引っ越しのための荷造りをしていた時に、1本のカセットテープを見つけた。
カセットテープに残されたメッセージを聞くため、律子はカセットテープが聞けるウォークマンを購入し、メッセージを聞いた律子は涙を流し、「探さないでください」と置き手紙を置いて、何も言わずに朔太郎の前から姿を消してしまった。
彼女の行き先が自分の故郷・四国の木庭子町であることを知った朔太郎は、彼女の後を追って故郷へと向かうが、そこで彼は高校時代のある記憶を辿り始める。
それは、朔太郎(森山未來)が初恋の人・亜紀(長澤まさみ)と育んだ淡い恋の想い出だった。
記憶の中の亜紀は白血病で倒れて辛い闘病生活を強いられてしまう。
そして、次第に弱っていく彼女を見て、自分の無力さを嘆くしかない朔太郎は、彼女の憧れの地であるオーストラリアへの旅行を決行するのだが、折からの台風に足止めをくらい二人の願いは叶わず、空港で倒れた亜紀は、その後、還らぬ人となるのだった…。
そんな二人の関係に、実は律子が関わっていた。
入院中、朔太郎と亜紀はカセットテープによる交換日記のやり取りをしていたのだが、その受け渡しを手伝っていたのが、亜紀と同じ病院に母親(田中美里)が入院していたまだ小学生の律子で、彼女の失踪もそれを自身で確かめる為だったのである。
果たして、亜紀の死やテープを届けていた相手が現在の恋人である朔太郎であったことを知った律子は、自らも事故に遭ったせいで渡せなかった“最後のテープ”を迎えに来た朔太郎に渡す。
それから数日後、約束の地・オーストラリアへと向かった朔太郎と律子は、最後のテープに録音されていた亜紀の遺志を叶えるべく、彼女の遺灰を風に飛ばした。


寸評
通称「セカチュウ」でテレビドラマでも視聴率を稼ぎ、ちょっとした純愛路線ブームを引き起こして映画化された作品だが、結果としてはイマイチといったところだ。
原作が甘っちょろい恋愛小説だったのか、それとも行定監督の演出不足によるものか、よく分からなかったけど兎に角期待しただけ不満の残る出来栄えだった。
行定監督って結局「GO」だけの監督だったのかな・・・。

まず、制作側が何をやりたいのかが観客である僕に伝わってこないのだ。
青春映画を作りたいのか、あるいは主演女優の長澤を売り出したいのか、あるいは観客を泣かせたいのか・
もちろん、そのすべてをやりたいのだとは思うが、一本、筋を通してほしいという気持ちになる。
それでもキャッチコピーなどを見ると、最大の目的は、"お涙頂戴映画"を作るという一点にあると想像される。
もしそうだとしたらこの作品は上辺をなぞった薄っぺらな作品に仕上がってしまっている。
セカチュウ・ファンで涙を流せるという人ならこれでも泣けるのかもしれないが、僕は泣けなかった。
観客を泣かせる映画はこんな作品ではないと思うのだ。
もちろん、人によっては感動で泣けるという人だっていることは承知の上である。

ファンの間では自分の10代の頃を思い出させるリアルな心理描写を絶賛する人も多いと聞くが、ファンでない僕は主人公カップル二人が完全にプラトニックの方向に向かっていて、結局これが現実性を大幅にそいでいると思ってしまうのだ。
2時間14分という上映時間も、この内容にしてはくどく感じるし長すぎる。
ヒロインを演じる長澤まさみはスクリーンに映えるすばらしい女優だとは思うが、同時にプロポーション抜群で健康的だなあとも思ってしまう。
頭を丸めた勇気と、やる気満々だったのだなあということだけは伝わってきた。

いい点を挙げれば、原作がどうなっているのか知らないが、カセットテープを介した過去と現在の行き来は良かったと思う。
朔太郎の婚約者である律子がそのカセットに絡んでいたという展開はちょっとした驚きの展開で面白い設定だ。
律子の突然の失踪は、朔太郎がいまだに亜紀を忘れられないでいるのではないかとの疑問を持っているからの様な雰囲気でスタートしているだけに、その設定効果は話をまとめるのに十分な役割を果たしていた。
そして、ロケ地などは「よくぞこんな良い場所を見つけた」と思うほど綺麗だし、映像もメルヘンチックで、光の取り扱いも行定監督らしく上手いと思うところはある。
しかし、それらの魅力をもってしても映画自体がイマイチである印象は最後までぬぐいきれなかった。
視聴率を取ったというテレビドラマをみていなかった僕にとっては「あ~あ、これが噂のセカチュウか」といった印象の映画だった。
結局、「どうしても見たいというケースを除いては、あまり積極的に勧める気にはなれないな」というのが僕の結論である。
かつて純愛物のプチブームを引き起こした歴史的作品ということで記憶に留めておこう。