「大列車強盗」 1972年 アメリカ
監督 バート・ケネディ
出演 ジョン・ウェイン アン=マーグレット
ロッド・テイラー ベン・ジョンソン
クリストファー・ジョージ
リカルド・モンタルバン
ボビー・ヴィントン ジェリー・ガトリン
ストーリー
ウエルス・ファーゴがら5万ドルの賞金がでることもあって、レイン(ジョン・ウェイン)は、若くて美しいロウ未亡人(アン=マーグレット)に手をかすことを承知した。
夫人と一緒にメキシコの荒野の奥深くにいき、そこに捨てられているボロ機関車に隠されている50万ドル相当の金を取り戻そうというのだ。
その金は、今は亡き彼女の夫が、生前に列車から強盗したものだった。
レインは危険な旅の応援を頼むため、古い相棒のウイル・ジェシー(ベン・ジョンソン)、グラディ(ロッド・テイラー)、ベン・ヤング(ボビー・ヴィントン)などを集めた。
グラディはカルフーン(クリストファー・ジョージ)にサム・ターナー(ジェリー・ガトリン)という2人も連れてきた。
一行は武器を積み込み、メキシコに向けて出発した。
その日おそく、武装した20人の屈強な男たちがレイン一行の跡をつけて出発した。
その中の7人はマット・ロウと一緒に列車強盗をした生き残りで、他の男は雇われガンマンだった。
ロウ夫人の跡をつけ、金を見つけ次第、それをかっさらおうというのだ。
3日後、大した混乱もなく目的の機関車にたどり着き、50万ドルの金塊を発見した。
尾行者たちに気づいたレインは、彼らの攻撃をさそう為に、箱をわざと目につきやすい所に置いた。
案の定、一味は攻撃してきたが待ち構えたレインたちは敵10人を倒した。
翌日、鉄道駅に着いた一行は、生き残った無法者たちの銃撃をうけた。
レイン、ジェシー、グラディの3人が酒場にたてこもり、ベンとサムがロウ夫人をホテルの安全地帯に移す一方、馬に乗ったカルフーンは、ロバに積んだ金を酒場に入れた。
レインとグラディは走ってきた貨車に飛び乗って、ダイナマイトを投げつけ、一味は残らず吹っ飛ばされた。
次の朝、列車に金を積み込んだ一同は、ロウ夫人に賞金は息子さんのために使うようにといった。
泣き出しそうな顔で彼女が列車に乗ると、フォームのはしから、葉巻をくわえたナゾの男が姿を現わした・・・。
寸評
何とものんびりした西部劇である。
のんびりとは郷愁に満ちたほのぼのとした内容という意味ではなく、描き方が随分とのんびりしていて緊迫感や面白さに欠けているのだ。
亡き夫が列車強盗で奪った金塊を息子が後ろ指を指されないように持ち主に返そうとする未亡人と、それを助ける男たちという設定自体は楽しめる組み合わせである。
亡夫が率いていた強盗団の生き残りがその金塊を狙って襲ってくるのだが、女性を交えたレイン率いる一団と、金塊を狙う強盗団の駆け引きがまったくなく、強盗団は数を頼りに攻めてっくる単純さで面白みが少ない。
強盗団は銃撃戦の時以外は遠景でとらえられ、彼らにどれほどのリーダーがいるのかはさっぱり分からない。
よくある展開だと、レインたちの中から欲に目がくらんで金塊を独り占めしようとしたり裏切る者が出てくるものなのだがそれもない。
ロウ夫人に襲いかかる男がいたり、恋が芽生えるといった展開もないので、野営を繰り返しながら目的地を目指しているだけといった印象を持つ。
彼らにピンチらしいピンチが見当たらない。
冒頭から謎の男が登場して興味を持たせるが、謎めいている割には存在感が薄い。
レインたちはロバにダイナマイトを背負わせているのだが、一体何のためにダイナマイトを持って行ったのかよくわからない。
最後になってそのダイナマイトが役立つのだが、そもそもの目的は何だったのだろう。
金塊が隠されている機関車をふっ飛ばすなら分かるのだがそれもなかった。
最後の対決場面で、死んでいるはずの酒場の親父が瞬きをしてしまうのは愛嬌としておこう。
ロウ夫人は荒くれ女ではないし、セクシー派のアン・マーグレットが演じると淑女にも見えない。
ジョン・ウェインとの掛け合いもどこかのんびりしている。
でも最後を見ると、ロウ夫人はアン・マーグレットで良かったのかもしれない。
レインに従っているのは南北戦争時代からの生き残りで、先も長くないと思っているジェシーとグラディのしんみりした語らいも、ジンワリと心に響いてこなかった。
中年の男の哀愁のようなものがもっとにじみ出てほしかったところである。
レインがかつて悪の道から救ったという若いベン・ヤングの描き方もアッサリしたもので、レインの若者たちに言いたいような説教の忠告相手としての存在にとどまっている。
彼らの中に負傷者は出るが犠牲になる者は出てこず、一方的な勝利に終わっている。
その辺も対決ものとしては物足りないと感じさせたのかもしれない。
ラストシーンでは彼らからロウ夫人への思いやりが描かれ、西部劇のエンディングらしいと思わせるのだが、そこからどんでん返しがあり、結局このどんでん返しを描きたいために長々と描かれてきたのだと判明する。
本当のラストシーンは娯楽作品らしい終わり方で一応の納得ができる。
「大列車強盗」という物騒な邦題の割には随分とのんびりした内容で、タイトルから内容を想像すれば期待を裏切られるのだが、のんびりと肩を凝らさず見る分には安心て見ることができる娯楽作である。