おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

007/カジノ・ロワイヤル

2023-12-16 12:33:04 | 映画
「007/カジノ・ロワイヤル」 2006年 アメリカ / イギリス


監督 マーティン・キャンベル
出演 ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン
   マッツ・ミケルセン ジュディ・デンチ
   ジェフリー・ライト ジャンカルロ・ジャンニーニ
   シモン・アブカリアン カテリーナ・ムリーノ
   イワナ・ミルセヴィッチ セバスチャン・フォーカン

ストーリー
殺しのライセンス“00(ダブル・オー)”を取得するため、昇格最後の条件である2件の殺害を実行したジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は見事ダブル・オーの称号を得る。
ウガンダでは、ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)という人物が、テロリストと取引をしていた。
マダガスカルでボンドは爆弾魔を壮絶なチェイスで追い、彼を捕獲し射殺したあと大使館を爆破した。
その様子が新聞で報じられボンドはM(ジュディ・デンチ)から叱責を受ける。
爆弾魔の携帯にエリプシスという着信履歴を見つけ、ボンドはロンドンへ戻りMのパソコンを使って発信元を突き止めバハマへと飛ぶ。
そこで謎の男がテロリストの資金運用をしているエリプシスだと睨んだボンドは、彼にポーカーを挑み勝利して彼の所有していたアストンマーチンを奪い彼の妻に接触したのだが、それに気が付いたシッフルは、エリプシスの妻を殺害した。
ボンドはシッフルとテロリストの仲介役の男を殺害すると、エリプシスのバッグを持った男を追ってマイアミ国際空港へ向かった。
バッグを持った男は空港内を混乱に陥れたあと爆弾を抱えて飛行機に近づいたが、ボンドはチェイスののちに彼に爆弾を装着し爆殺した。
シッフルは計画が大失敗したことに怒り、カジノで損失の穴埋めを行うことを決めた。
Mは財務省のヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)という女性とともに、モンテネグロで開催されるカジノへ行くようボンドに指示した。
シッフルに対しては、テロリストが資金返済をするよう脅迫をかけていた。
テロリストに見つかったボンドは、階段で壮絶な戦いを行ってテロリストを殺した。


寸評
ショーン・コネリーのボンドでスタートしたシリーズだが、彼が去ったあと主人公のジェームズ・ボンド役を数作ごとに変更してリフレッシュしていたが徐々にマンネリ化していくと同時に陳腐化していた。
しかし本作における新ジェームズ・ボンド役としてのダニエル・クレイグの登場はそれらを払拭している。
劇中で彼は何度も裸になるのだが、見るからにマッチョで若々しい。
彼の身のこなしによってCGに頼らない本物のアクションシーンをたくさん入れることができている。
ダニエル・クレイグのボンドは新人スパイということで、まだまだ荒削りな男くささとワイルドさを兼ね備えながらも、細身のタキシードの着こなしなど洗練されたセクシーさも感じさせ、ボンドとしてのイメージは悪くない。

映画は若き日のボンドが007になった直後の初事件を描くというものである。
オープニングのタイトルデザインが奇抜でアイデアにあふれているが、それに続くアクションシーンで作品に一気に引き込まれていく。
テロリストをボンドが追いかけるアクションシーンなのだが、高所のクレーン場を駆け巡る一歩間違えれば墜落死をまぬがれない超高所での戦闘である。
壁を乗り越え飛び降りるスピーディーなアクションの連続で、この冒頭のシーンだけでも値打ちがあるといものだ。
スパイ映画でありながら、アクション作品でもあると印象付け、後々描かれるアクションシーンも迫力あるものとなっている。
世界旅行を思わせるような風光明媚な映像も流され、ベニスでビルが水中に没するシーンには驚かされる。
もちろんそこにはドラマも盛り込まれている。

ボンドが使うアイテムは極力荒唐無稽さを抑えたものとなっており、スパイ映画としてのワクワク感を高める程度のものとなっていることが最低限のリアリティをもたらせている。
そのことがボンドの本気のロマンスにリアリティを感じさせているのだと思う。
「あなたにはもう近づけない。あなたはまた甲冑を付けてしまった」とヴェスパーが言うと、ボンドは「甲冑など付けてない。君に脱がされた。僕は丸裸だよ。今、ここにいる僕。丸裸の僕はすべて君のものだ」と応じる。
そしてボンドはパソコンからMに辞意を伝えるのだが、見ている僕たちは「え?本当に?」と思ってしまう。
仕事が終わったあとのアバンチュールかと思わせたところから、物語は二転三転していきラストの15分はついていくのが精一杯という展開が続く。
登場人物の誰もが「ええ、そうだったの?」という内容なのだ。

シッフルはテロリストの資金運用を受け持っており、損出を出すことは出来ない。
値上がりを続けている会社の株を空売りする理由も明かされる。
殺しのライセンスを持つボンドにシッフルが殺されないのは、テロリストの資金を絶つためである。
物語上、シッフルの末路は分かり切ったものだが、そのあっさりとした末路をご都合主義ではなく納得させる背景も描き込んでいて、作品を手堅い出来栄えとしている。
ラストはちょっとあっけないが、ダニエル・クレイグのボンドが楽しみに思える内容となっていて、次回作に期待を持たせた。