おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

レインマン

2020-07-25 06:54:08 | 映画
「レインマン」 1988年 アメリカ


監督 バリー・レヴィンソン
出演 ダスティン・ホフマン
   トム・クルーズ
   ヴァレリア・ゴリノ
   ジャック・マードック
   マイケル・D・ロバーツ
   ラルフ・シーモア

ストーリー
26歳の中古車ディーラー、チャーリー・バビットは、恋人スザンナとのパーム・スプリングスへの旅の途中、幼い頃から憎み合っていた父の急逝の訃報を耳にし、葬儀に出席するため、一路シンシナティへと向かう。
そしてその席で、チャーリーは父の遺言書を開封し、自分に遺されたものが車1台と薔薇の木だけという事実に衝撃をうける。
同時に300万ドルの財産を与えられたという匿名の受益者の存在を知った彼は、父の管財人であるウォルター・ブルーナー医師を訪ね受益者の正体を聞き出そうとするが、医師はそれを明かそうとはしなかった。
諦めて帰ろうとするチャーリーは、スザンナの待つ車の中にいたレイモンドという自閉症の男と出会い、やがて彼こそが受益者であり、自分の兄であることを知るのだった。
記憶力に優れたレイモンドをホームから連れ出したチャーリーは、スザンナも含めて3人でロスヘ旅することにしたが、ある日、チャーリーが遺産を自分のものにするためレイモンドの面倒を見るつもりでいることを知ったスザンナは愕然とし、チャーリーのもとを去る。
兄の後見人となることで遺産の半分を所有しようとするチャーリーは、飛行機嫌いのレイモンドとともに車で旅をすることになった。


寸評
僕は自閉症のことをほとんど知らなくて、この作品と2005年のチョン・ユンチョル監督作品「マラソン」によって知ったと言っても良い。
自閉症は病気ではなく傾向なのだと言われる先生もおられるようだが、特徴を見るとある種の障害を抱えていると言えそうで、常識や社会の暗黙のルールから外れた行動を取ってしまうようである。
1つのことを集中して行うのは得意だが、複数のことを同時進行するのは難しいとされている。
感覚の偏りもあって、聴覚、視覚、味覚などすべての感覚において敏感あるいは鈍感という傾向があるらしい。
僕がらしいとしか言えないのは、自分の周りには自閉症の人はいないし、出会ったこともないからである。
したがって作品を通じて自閉症の人の症状を知ることになるが、ある意味で超人のような気がしてくる。
この作品でもレイモンドは驚異的な記憶力を見せ、この映画に変化をもたらしていく。
もちろん記憶力が一番発揮されるのはラスベガスのギャンブル場のシーンであるのだが、レイモンドの子供の頃の記憶によってチャーリーが兄への愛情を芽生えさせていくという役割も担っている。
ギャンブルで得た金でチャーリーは会社のピンチを助けてもらい、弟は兄に感謝するようになっていく。

オープニングで高級車のランボルギーニが運ばれてきて、チャーリーは車のディーラーをやっていることが示されるが、ハッタリを効かせた販売をやる彼はかなりいい加減な男であり、台所も火の車であることが分かる。
チャーリーが300万ドルの遺産に触手を伸ばすのも判ろうと言うものである。
最初は半額の権利を主張していたが、途中からレイモンドの後見人になることで資産管理を任される立場を得ようとするのだが、どちらにしても父が残した遺産を狙っていることに違いはない。
物事を自分の思い通りにしようとする面があり、それは恋人のスザンヌに対しても同じだ。
チャーリーは父の厳格さで疎遠になったように言っているが、原因は彼のこの性格にあたのかもしれない。
物語的にどこかで彼の性格に変化がみられるようにならなければならないが、それも兄が自閉症であることによってもたらされるので違和感なく受け入れることができる。

レイモンドは自閉症で自分を上手く表現できないが、根は心優しい人物である。
多分、子供のころからそうだったのだろう。
レイモンドが施設に入れられた原因がそれとなく語られるが切ないものを感じる。
スザンヌがレイモンドに優しくするエレベーターのシーンは微笑ましい。
レイモンドは言われたことに忠実だ。
自閉症の人に「この書類に間違いがないか調べてくれ」と命じると、間違いは発見できるが訂正も報告も出来ないらしいのだが、それは訂正しろとも、報告せよとも言われていないからだとのことである。。
交差点の途中で信号が「止まれ」に変わっとき、レイモンドが渡るのをやめてしまってその場所で立ち止まってしまうシーンはそんな様子を表している。
ダスティン・ホフマンの言動がが兎に角面白く、それを引き出してしまうトム・クルーズのいらだったツッコミも愉快ではあるのだが、何といってもダスティン・ホフマンで、彼の演技なくしてこの映画はない。
数々の名シーンももちろんいいが、エンド・クレジットと共に写し出される、二人だけしか共有することが出来ないレイモンドが撮った旅の写真が醸し出す切なさが一番だ。