おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ラスト・オブ・モヒカン

2020-07-04 11:02:25 | 映画
「ラスト・オブ・モヒカン」 1992年 アメリカ


監督 マイケル・マン
出演 ダニエル・デイ=ルイス
   マデリーン・ストウ
   ジョディ・メイ
   ラッセル・ミーンズ
   エリック・シュウェイグ
   スティーヴン・ウォーディントン

ストーリー
1757年、独立前夜のアメリカ東部。
コーラは妹アリスと共に、英軍を率いる父、マンロー大佐に会うため、植民地争いの最前線へと向かっていた。
護衛隊を指揮するヘイワード少佐に求婚されていたが、答えを出せずにいる。
突然仏軍側のインディアン、マンロー大佐の軍に妻子を殺されたマグア率いるヒューロン族が一行を襲った。
コーラに銃口が向けられた時、モヒカン族の酋長チンガチェックと2人の息子、ウンカスとホークアイが現れ彼女を救ったのだが、ホークアイはイギリス人開拓者の孤児だった。
コーラとホークアイは愛し合うようになっていたが、嫉妬にかられたヘイワードがホークアイを反逆罪で捕え、牢に入れてしまう。
仏軍の猛攻の前に、やむなく降伏したマンロー大佐らは砦を出るが、そこへまたヒューロン族が襲いかかった。
混乱の中ホークアイはコーラを救い、酋長とウンカスも駆け付けアリスを救い出すが、大佐は命を落とす。
逃避行の中で、ウンカスとアリスの間にも愛が芽生えていた。
一行は激流を下るが、ホークアイは、コーラにヘイワードと共に別行動をすすめ、説き伏せると、目もくらむ高さの滝を飛び降りていった。
しかしコーラとアリスはヒューロン族に捕らえられてしまう。
酋長はコーラを火あぶりの刑にし、アリスはマグアと結婚させると宣言する。
ヘイワードがコーラの代わりに処刑され、コーラとホークアイは釈放されるが、ウンカスが単身アリスを助けに乗り込み殺されてしまう…。


寸評
この映画、絶対に題名で損をしている。
何回か見たけれども、見るたびに「なぜこの題名にしたのか?」と思ってしまう。
原題通りと言えばそれまでなのだが、宣伝部としてもう一工夫が出来なかったものか。
モヒカンと言えばモヒカン刈りしか知らない僕にとって、彼等の崇高な精神は衝撃的だった。
イギリスとフランスの覇権争いがあり、愛あり、友情ありで、おまけに音楽が素晴らしく、まさしく映画なのだ!

荘厳とも言える音楽と共に森を疾走する男たちの姿で始まるが、やがてそれはシカを追ってのものだと分かる。
射止めたシカに対して森の兄弟と呼びかけ、その脚力を褒めたたえるので、彼等は自然と共に生きてきた先住民族であることが印象付けられ、英国人の小屋を訪ねることでホークアイが元は英国人であることも観客にインプットされる。
そこでは新大陸の覇権を巡って英国とフランスが戦っており、英国の入植者が民兵として参戦することも描かれ、彼等が参戦する条件として、村が襲われれば軍を抜けて帰宅できるということも明らかとなる。
その条件が後に騒動をもたらすのは自然な流れだろう。

圧倒的な兵力と大砲で英国軍の砦を攻めるフランス軍との攻防シーンは、テーマ曲が重なって迫力と言うより壮大な絵巻物を描き出す。
戦火の中をかいくぐって砦に入城するコーラ達の姿も描かれ、その時代の戦争の雰囲気を上手く演出している。
時代を感じさせるのは英国の降伏と砦の明け渡し場面で、騎士道文化が垣間見える。
それとは相いれない戦いの文化をもつ先住民との違いも同時に描かれていた。
すさまじい肉弾戦は森の狭間を退却する英軍に向かってヒューロン族が襲撃するシーンでも描かれる。
襲撃するヒューロン族の恨みも伝わってきてなかなかの迫力あるシーンの連続だった。
マグワを演じるウェス・ステューディの好演も対立関係を盛り上げていて、貢献大だと思う。

同じ先住民族でありながら、部族の違いから敵対し、英仏の新大陸における覇権争いに巻き込まれ滅んでいく彼等の運命に涙した。
先住民の土地を英国とフランスという大国が奪い合っている。
先住民の部族はそれら大国の代理戦争を余儀なくされている。
マグワのように、大国の論理に感化されてその道具となっていく者も出てきてしまう。
現代に起きている地域紛争の縮図を見ているようでもある。
受けた屈辱と悲しみは憎しみの連鎖をもたらしてしまっている。

寡黙なウンカスの存在がなかなかよい。
歴史スペクタクルのような展開から、ラブロマンスへと移っていく流れも、突然変異的でなくて自然と入り込めた。
そして思う。
彼らが持っていたような勇気と清らかな精神は近代化の中でなくなってしまったのだろうか?
それとも最後のモヒカン族によって受け継がれたのだろうか?