おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

リンダ リンダ リンダ

2020-07-21 07:49:37 | 映画
「リンダ リンダ リンダ」 2005年 日本


監督 山下敦弘
出演 ペ・ドゥナ 前田亜季 香椎由宇
   関根史織 三村恭代 湯川潮音
   山崎優子 りりィ 藤井かほり
   甲本雅裕

ストーリー
とある地方都市にある芝崎高校。
高校生活最後の文化祭に向けて、オリジナル曲の練習を重ねて来た軽音楽部のガールズ・バンド。
文化祭を翌日に控え、恵、響子、望の3人は途方に暮れていた。
本番まであと3日と言う時になってギターの萠が怪我で、ヴォーカルの凛子が喧嘩で抜けてしまった。
その時、偶然ブルーハーツの「リンダ リンダ」を耳にした恵たちは、これなら3人でも演奏できると、急にやる気を取り戻す。
そこで、残されたドラムの響子、キーボードの恵、ベースの望は、ちょうど目の前を通りかかった韓国からの留学生ソンをボーカルに引き入れ急造バンドが誕生した。
彼女達は伝説のロック・バンド”THE BLUE HEARTS“のコピーを演ることにする。
恵の元カレのトモキが手配してくれたスタジオや、深夜の学校に忍び込んでの猛練習。
次第に4人の絆も深まっていく。
しかし文化祭3日目の本番当日、スタジオで最後の練習をしていた4人は、連日の疲れがピークに達し、ついつい居眠りして出演時間に遅刻してしまう。
だが、萠や留学生の田花子らが時間稼ぎをしてくれていたお陰で、ギリギリ持ち時間内に間に合い、こうして即席バンド”ザ・パーランマウム“は大勢のオーディエンスを前に、様々な想いを込めて演奏を開始するのであった!


寸評
ソンさん役のペ・ドゥナのキャラが断然光っている映画だ。
不機嫌そうな顔はもちろん、他人の恋愛話に興味津々な表情を示すユーモラスなかわいさも披露している。
ライブ前夜に体育館の舞台で、1人でメンバー紹介するシーンはまさに名演。
典型的な青春映画のネタで、文化祭を目前にしたボーカル不在の女子高生バンドが、本番までわずか数日の猛特訓を重ねて当日を迎える物語なのだが、スゴイ映画だったというわけではないが何故か心に残る。
どぶネズミみたいにぃ~という「リンダ リンダ」を歌うペ・ドゥナの声が耳にこびりついているのだ。
ブルーハーツの「リンダ リンダ」というシンプルながら力強さを感じさせる楽曲がこの映画の魅力高めている。
「リンダ リンダ リンダ」とリンダがひとつ多いタイトルを何となく納得させられてしまう雰囲気がある。
女子高生のバンドにかける思いと友情を等身大で描いた青春バンド・ムービーだが、入れ込むことなくちょっと間延びしたような感じとユーモアで描いている。
たわいのない会話や、一歩下がった視点で描くバンドの練習風景などが等身大の女子高生を感じさせた。
クライマックスを除けば盛り上がる場面もほとんどないし、高校生映画につきものの恋愛ごっこも深く描かれない。
恵(香椎由宇)が付き合っていたらしい男との関係も深く描かれないし、響子(前田亜季)の恋の行方もアッサリした決着のつけ方だ。
恵と凛子(三村恭代)の仲違いの詳しい背景などもはっきりと描かれていない。
それなのに、見事に少女たちのキラキラと輝く青春の一ページを切り取っていると思う。
序盤に漂う不安定な空気が次第に晴れていく感じがするのだ。
それは女子高生たちの変化とうまくリンクしていたからだと思う。
夜間練習している一連のシーンなどは、どうでもいいような会話が続けられるが、彼女たちの体温が伝わってきて青春を感じさせた。

ユーモアシーンはペ・ドゥナが独り占めしていて、筆頭は留学生ソンと彼女に好意を寄せる男子生徒( 松山ケンイチ)とのやりとりだ。
男子生徒の槙原は留学生のソンに韓国語で告白するのだが、韓国からの留学生であるソンは日本語で答える。
そして「嫌いじゃないけど、好きじゃない」と、バンドメンバーを選ぶ彼女の姿に抱腹絶倒だ。
夜間に学校に忍び込む場面でも、下から「パンツ見えてる」と言ったり、そういえばバンドに加わる時のシーンも可笑しかったなあ。 カラオケボックスでのやりとりも思わず笑ってしまった。
彼女の存在なくしては成り立たない映画だった。

雨が最後の盛り上がりを手助けするが、雨宿りのため模擬店をやっていた連中が体育館に集まってくる理由にもなっていて、わざとらしさがないのがいい。
そして、会場が「リンダ リンダ」で盛り上がった次に、彼女たちは同じくブルーハーツの「終わらない歌」を演奏するが、その歌詞がいい。
「終わらない歌を歌おう クソッタレの世界のため、終わらない歌を歌おう 全てのクズ共のために、終わらない歌を歌おう 僕や君や彼等のため、終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように」
その歌は「リンダ リンダ」以上に彼等の心情を表していたと思う。