ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

老子の「無為」の思想とコロナ禍への対処法

2020-11-18 11:37:43 | 日記
新型コロナの猛威が今、人類の生存を脅かしている。この世界規模のコロナ禍に対して、老子の「無為」の思想はどこまで有効なのか。

こういう問を立てたとき、だれもが思いつくのは、あの〈ステイホーム〉の一件だろう。今年4月、安倍首相は東京都など7都府県を対象に「緊急事態宣言」を出し、新型コロナの感染拡大を阻止するため、外出自粛などの対応を要請した。

外出をしない。友人とおしゃべりをしない。居酒屋で飲み会をしない、等々。そういう諸々の〈ない〉という形の無為が、(感染の拡大阻止という)積極的な行為としての意味を持つのだ、と、そう安倍首相は宣言したのである。

この無為は、具体的には「ステイホーム」(うちにいる、うちでじっとしている)という形をとるが、このことがコロナウイルスの拡散を防止し、(罹患すれば重篤化を免れない)高齢者の命を守ることにつながる。この無為はまた、医療従事者の負担を減らし、日本の医療崩壊を食い止めることにもつながるというのである。

このことについて、以前、私は本ブログで次のように書いたことがある。
「ステイホームという無為の形は、これまでにない新しい行為の実行方式を提示する。そのようなものとして、これは、妖怪コロナとの付き合い方に新境地を拓くものになるのではないだろうか。」
(4月14日《行為としての無為について》)

こう書いたとき、私はことさら老子の言説を意識していたわけではないが、今考えると、老子の「無為」の思想は、たしかにコロナ禍への対策にも有効だと思うのである。

コロナ禍に対する老子の「無為」の思想の有効性・正当性は、また別の観点ーー地球規模の観点からも、言えるのではないだろうか。私が注目するのは、マクニール(シカゴ大学の歴史学者、故人)の「生態復讐論」と、これを踏まえた近藤大介氏の見解である。

地球の生態系に対して、これまで人類が加えてきた横暴ともいえる過剰な作為。その結果が地球環境の破壊であり、これに対して地球の生態系が警告、復讐としてもたらしたのが、このたび人類を見舞ったコロナ禍だというのが、マクニールの「生態復讐論」であり、これを踏まえた近藤氏の見解である。

人類が活動を停止して、地球環境への働きかけをやめれば、地球環境のほうも人類への復讐の手を緩めるのではないか。かくしてコロナ禍は終息するのではないか。ーーそう考えるとき、老子の「無為」の思想は、コロナ禍への最も適切な対処法を提示する原理的思考と言えるように思えるのである。
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