趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『果つる底なき』 池井戸 潤

2011年11月10日 | 
1998年第44回江戸川乱歩賞を受賞した、池井戸潤さんのデビュー作です。
作品紹介には、
‘元三菱銀行員の大型新人(35歳)が内幕を抉る新しい金融サスペンスの誕生!’



銀行を舞台にした小説をお書きになりたかったことが、よく分かりました。
本の最初に、受賞の言葉が寄せられていて、そこに記されていました。
そして、受賞の時の著者の写真も。
当然ですが、お若い!!
先日の直木賞受賞でちらっと見た映像とはちょっと違って見えます。

この本を読んだのは、最近の本は人気があって予約しないと借りられないので、
書棚に並んでいる初期の頃の作品から読もうと思ったからです。
それに、何と言ってもデビュー作ですし、江戸川乱歩賞も受賞なので。

読んでいると、主人公の銀行員と著者が重なって見えます。
この主人公のように、きっとまっすぐで融通のきかない熱血漢だと。
だからこそ、エリート街道を辞め違う生き方を選ばれた・・・。

近年、就活していた我が子達を見ていて
希望にあふれて入社した後、自分の意に沿わない仕事を押し付けられたり、
理不尽な扱いを受けたり、倫理に反する行為を求められたりしたら、
どうして行くのだろうとバクゼンと不安に思いました。

もちろん小説はあくまで小説で、現実的でない部分もありますが、
それでも、銀行という内部の仕事の様子が分かりやすく書かれているので、
ふ~ん、銀行員も大変なのね、なんて思ったり。

デビュー作ということで、近年の文章の滑らかさは無いですが、
題名に象徴されるように、とても情緒的な言葉をお使いになり、
人間の心の闇を描こうとなさっているのが、とても印象深かったです。。