ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

滑稽な物語

2024-05-30 08:29:35 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「物語」5月24日
 前経済部岡大介記者が、『日銀 もう物語は要らない』という表題でコラムを書かれていました。その中で岡氏は、就任1年を過ぎた植田和男氏の手腕を評価なさっています。その一方で、『まだ分からないのは、世間や政治が押しつける「物語」から日銀が真に解放されるかどうかだ』と述べられているのです。
 岡氏は、前日銀総裁黒田氏時代、『自ら「異次元」と称する大規模金融緩和を打ち出して、人々にこびりついたデフレマインドを拭い去るという「物語」を前面に出した。メディアを含めて世間は「レジームチェンジ」「黒田バズーカ」ともてはやした』について、『期待したほどの物価押し上げ効果はなかった』『国の財政規律は緩んだ』『産業の新陳代謝や構造改革はほとんど進まなかった』と否定的に評価し、その原因を、分かりやすく楽な、耳触りの良い「物語」の毒にはまり込んだ結果だと指摘なさっているのです。
 全く同感です。私は黒田日銀の施策を強く批判する者ですが、ここではそのことには触れません。ただ、現実は複雑なさまざまな要素や要因が絡み合ってある結果をもたらしていることを意図的に無視し、何か即効薬、特効薬的な画期的な施策があり、それを用いさえすればすべてが上手くいく、というような「物語」を流布し、それを人気取りに使う政治家が多いというのは、多くの分野で見られることだと指摘しておきたいのです。
 彼らは、特効薬があるのにそれを用いようとしないのは、既得権者がそれを妨害しようとするからであり、自分はそうした抵抗勢力をぶち破る真の改革者であるというポーズをとって、人々に訴えかけます。自信満々に前任者を否定した黒田氏や安倍氏のように。
 学校教育においても同じような「物語」は多数存在します。競争原理を取り入れれば学校は活性化する、という物語を盲信した人たちは、学校選択制と教員の業績評価導入で、学校教育が抱える問題のほとんどは解決できると主張しました。現実はどうでしょうか。不登校は減りましたか、いじめは減りましたか、教員の指導力は向上しましたか。悪化したというデータもない代わりに有意に改善したというデータもありません。一部の自治体では、学校選択制を見直す動きも出ています。
 いじめは子供の心が歪んでいるから起こる、道徳教育を充実させればいじめは減るというバカな「物語」はどうでしょうか。道徳を教科化したことでいじめは減りましたか。明確にノーです。
 教育行政も「物語」依存を脱する必要があります。特効薬幻想を止めるべきです。苦しくても、困難でも、一つ一つの課題に真摯に向き合い、予算増、学校のスリム化という国民受けの悪い施策を地道に進める覚悟が必要です。

 

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