ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

なぜ誰も

2024-05-27 08:10:52 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「チェック機能」5月22日
 『教委、性犯罪公判で動員 教員加害4事件傍聴妨げ』という見出しの記事が掲載されました。『横浜市立学校教員による児童生徒へのわいせつ事件の裁判を巡り、市教育委員会は21日、職員を横浜地裁の法廷に動員し第三者が傍聴できないようにしていた』ことを報じる記事です。
 記事によると、『傍聴の可否が先着順で決まる。市教委は動員した職員で傍聴席を埋めることで第三者の膨張をできなくした』『1回の公判で最大約50人の職員が傍聴した』『動員の理由として、事件で被害を受けた児童生徒の保護者から「子供のプライバシーが拡散しないか心配だ」といった要望があった』ということです。
 裁判の公開原則を損ない、加害教員を守ろうとした疑惑を与えたという意味で、許される行為ではありません。その上で疑問な点があります。まず、記者会見で対応しているのが教職員人事部長という役職の方である点です。性加害問題の対応は普通指導室課長が行うのではないでしょうか。
 私も指導室長時代に、教員がのぞきで逮捕されるという事案に対応しました。小さな市でしたから比較にはならないのかもしれませんが、保護者との対応も私がしました。ですから「プライバシーが~」という相談も私のような職にあるものが受けたと考えるのが普通です。その後教委全体で対応を考えるとなったときに、上席部長である人事部長が職員への指示命令を発したのだと思われますが、教委としては、保護者からの「強い」要望を受けての措置という点を強調することが教員擁護説を否定する上で有効なのですから、保護者と接してきた指導室課長が記者会見での説明を担うのが自然だと思うのです。
 まあそれは小さな違和感です。重要なのは、今回の対応について、教委内で異論は出なかったのか、ということです。記事では、『わいせつ事件が起きた学校を所管している教育事務所の所長が、メールや文書で傍聴を呼びかけていた』とあります。当該校の校長、教育事務所の所長、記者会見した人事部長、この3人以外にも5~6人の部課長が決裁に関与していると思われます。その中に、これは問題だと指摘する者はいなかったのでしょうか。
 さらに言えば、裁判絡みの案件では、顧問弁護士に相談するのが一般的です。私の勤務した人口十数万人の小さな市でさえ顧問弁護士がいて、私も対応を相談させていただいたものでした。横浜市教委に顧問弁護士がいないはずはありません。そして顧問弁護士に相談していれば、今回のような対応を是とするはずもないのです。
 失敗や間違いはどのような個人にも組織にもあります。ですから単なる失敗よりも大きな問題なのは、組織の体質や文化、空気感なのです。上席の者が言ったことには異を唱えにくい、直接の担当者以外の関与者は他人事意識が強く真剣に取り組もうとしない、弁護士など外部の専門家をも部外者として排除する、そんな雰囲気が醸成されているとすれば、そのこと自体が大問題です。
 どうなのでしょうか。

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