ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

濡れ衣

2024-05-07 07:43:51 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「処分が難しい時代」4月27日
  『米東部 流布疑いの教員逮捕』という見出しの記事が掲載されました。『ボルティモア警察は25日、生成AI技術を使って、勤務先の高校の校長が黒人差別をしたかのような音声を流布したとして、高校の男性体育教員を学校の業務妨害などの容疑で逮捕した』ことを報じる記事です。
 記事によれば、『校長はこの教員が学校の運営資金を不正に流用した疑惑を追及しており、その仕返しだったとみられる』とのことです。『問題になったのは、校長に似た声で「黒人の生徒は不愉快で無能だ」』などの音声で、『校長は一貫して「偽物だ」と主張していたが、騒動になって以降は有給休暇扱いになっていた』そうです。
 怖い話です。そして対岸の火事ではなく、我が国においても、早急に対策が講じられる必要がある事案です。今回の事件では、校長の「偽物だ」という主張、つまり濡れ衣であり事実無根だという主張は受け入れられず、実質的な処分を受け、校長本人も、そしておそらくその家族も、さまざまな非難中傷、嫌がらせや攻撃にさらされてきたはずです。その痛みは、無実が証明されたからといって消え去るものではありません。
 こうした「仕返し」が普通に行われる状況になれば、反発を恐れ、校長など管理職が正当な指揮監督、指導ができなくなる恐れがあります。それは、学校という組織の崩壊であり、公教育が成り立たなくなることを意味します。
 単に教員から校長という図式ではなく、教員間で、子供から教員や校長へ、あるいは保護者から教員や校長へ、さらには教委などの行政機関へと、いくらでも不当な仕返しが起きる可能性があるのです。我が国の公務員に対する処分では、疑いが生じた時点で、この例のように実質的な停職状態に置かれるのが普通です。そして無実が明らかになってもその補償は行われません。まず、こうした制度を見直す必要があります。
 こうしたケースで本人が事実無根を主張する場合、暫定的にその主張を認め、有給休暇など実質的な処分を留保する代わりに、もし事実無根という主張が虚偽だった場合は、さらに重い処分を講じるというシステムが検討されるべきです。
 また、虚偽情報の流布に対する処罰を重くする必要もあります。さらにこれらの対応を並行して、教委やそれを助ける首長部局に、生成AIによる虚偽情報の作成に詳しい専門家の配置を進めることも大切だと考えます。

 

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