ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

結局損をするのは

2024-05-20 07:27:32 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「忘れないで」5月14日
 『カスハラ対策義務化 自民が提言案、法整備促す』という見出しの記事が掲載されました。『自民党のプロジェクトチームは13日、顧客による迷惑行為である「カスタマーハラスメント」から従業員を守る対策を企業に義務付ける提言案を大筋でまとめた』ことを報じる記事です。
 記事によると、『3万人超を対象に実施したアンケート調査では、47%が「直近2年以内でカスハラ被害にあった」と回答』したとのことです。こうした状況を受け、提言案では『企業による相談対応や雇用管理を企業に義務付ける法整備を求め』る一方、『「消費者の正当なクレームとの線引きが難しい」との声もあり、提言案では業種別のカスハラの定義の明確化や消費者教育の強化も求めた』そうです。
 学校はどうなるのでしょうか。モンスターペアレンツという言葉が十数年前から使われているように、理不尽な要求や不当な言いがかりをつける保護者の存在が認知されています。また、保護者ではない一般市民からのシチハラ(シチズンハラスメント=私の造語)も増えています。
 記事では、厚労省が法整備を担うようですが、文科省は学校や教員を守るために動くことは考えていないのでしょうか。企業の従業員と顧客、学校の教員と保護者・市民、この関係は似ているようで異なる面があります。
 例えば、ある企業の相談室にその企業に対する文句を言い募る電話があったとします。その企業が提供する商品やサービスの購入者でもない全く無関係の人物が、事実ではないネット等の噂をもとに掛けてきた場合、企業側は丁重な言葉遣いで事実と異なることを告げ、電話を切ることができます。その行為を誰も非難しません。
 しかし学校の場合、「お前たちは公務員だろう。俺たちの税金で給料をもらっているんだろう。全体の奉仕者だよな。その態度はなんだ」と絡まれてしまうのです。東京のある学校で教員が痴漢行為をしたという記事が出れば、1000km以上離れた九州や北海道からも「何をしていたんだ」とお叱りの電話が入るのです。こうなると電話が鳴ること自体ハラスメントだと言いたくなってしまいます。
 提言案では公務員については触れられていません。しかし、公務員、特に学校の教員こそ、最も無防備にハラスメントにさらされているのです。提言案は、消費者教育の強化を求めていますが、消費者教育も対公務員はその範疇にありません。消費者教育がこれまで消費者としての権利を強調するものから、消費者としての義務、即ち企業の従業員への適切な対応を含むものに変わっていくとすれば、対公務員教育とでもいった内容で、公務員の権利を説き、公務員への不当で威圧的な接し方が、結果として国民全体の利益を損なうということをしっかりと教える教育も構築されなければならないと思います。カスハラがその企業の関係者と従業員の士気低下によるマイナスを被るその顧客への不利益をもたらすのに対し、校務員へのハラスメントは公務員への優秀な人材応募を減らし、公務員の士気低下を招いて国民全体が被害者となるのですから。
 教員への市民や保護者によるハラスメント防止、少なくともそれくらいのことは文科省単独でもできると思います。

 

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