こ と の 端

散文でロジックを
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枠 組 転 換

2018-05-06 10:17:38 | Weblog
戦後長期間つづいていた

イデオロギー対立の時代が変化し

鉄のカーテンと呼ばれていた

米ソ間の冷戦構造が消えたのは

マルタ島沖の艦船上で

当時の米大統領だったパパブッシュ



ソ連共産党書記長ゴルバチョフ

とが

1989年12月2日から3日にかけて

軍事的対立に終止符を打つ

ための合意を成立させたからだった


相互に直面する状況となっていた

当座の脅威

を予期せずに失った格好のアメリカは

軍事予算を増やすための理由

をその直後から

喫緊の課題として

探さざるを得なくなっていた

軍事予算を減らすことになる

などとは

誰もが考えていなかったからである


新たな敵を大急ぎで作り出す

その必要に迫られたアメリカ

の軍産複合体制は

不自然なほど突発的に発生した

湾岸戦争に助けられ

最新鋭の兵器と映像情報を

そこで世界中に

具体的且つ詳細に

指し示すことができたことから

米軍の存在意義を

世界中にこの時

知らしめることに成功した


マルタ会談の翌年

90年8月2日に

湾岸戦争がついに始まった


イラクがクェートを予告なく侵略し

その報復戦という位置づけ

の戦争だった

世界の平和を守る保安官としての立場

を以前から自負していたアメリカは

理由のないクェート侵攻を行ったイラク

を討伐するための攻撃

であることを強調し

NATO加盟国を中心とする

多国籍軍を急遽編成し

イラクに対する集中攻撃を

入念な準備を

半年ほどの時間をかけて実施し

戦争状態へと突入した


敵のプレゼンスを

常に必要としているアメリカは

戦闘に於ける行動の

合目的性を敢えて強調することで

自らを正当化する

という手続きを踏むことを

常套手段として心得る


真珠湾攻撃を日本海軍に

先制攻撃を仕掛けさせ

被害状況を米国民に訴えた上で

全米規模の報復感情を

煽りに煽った

日本軍に対する確定済

となっているこの事例や

ベトナム戦争の理由となった

トンキン湾事件を演出した

その事実のみならず

9.11を事前に防遏することなく

易々と実行させてしまったことで

後のイラク戦争を

テロとの戦いという名目で

合理化した一連の史実

などがアメリカのもつ

戦争を合理化するための傾向の存在を

よく物語っている


それが好戦的なアメリカの持つ

行動原理であるということを

連綿たる事実の山が傍証となっている

これら時系列で整理された史実

の記録と経過が

数多く世界史に残されている


クェートを攻略したイラクの意図は

当時から不明であった

CIA周辺からの使嗾があった

という可能性も当時指摘されていた

扇情的な間接情報を跋扈させた

とする報告は証言者自らが

その後認めている


米軍のもつ攻撃能力の高さを

なにはともあれ

結果として世界中に示したことで

リビアのカダフィを自発的に帰順させる

という意図せざる効果も

誘導する結果となった


先般北朝鮮を名誉ある譲歩(帰順)

へと導いたのは

力による示威行動を突き詰めていった

その結果として与えられたもの

という点で

それぞれに共通する経過の痕跡が

二重写しとなって

歴史の残像を結んでいる


パパブッシュは湾岸戦争の戦費調達を

増税という方法で賄った

それが通常2期8年つづく予定の大統領職を

1期4年で終らせた

その後民主党のクリントン政権が後を襲い

定例の二期八年

を多くの問題を残しながらも

務めあげ

ソ連の自己崩壊とそれによる自由化の波

がドル経済圏の拡大を促した

この僥倖が加わったことによって

双子の赤字を黒字化したものの

ブッシュジュニアがイラク戦争で

蕩尽してしまったのだった


そのキッカケとなった

同時多発テロの犠牲となった

軍産複合体制を支持基盤

とする共和党政権は

ソ連の核と

リビアが開発していた戦術核の脅威

を消し去った後の時代で

米国民に一致団結するための

政治的危機

を新たに創り出す必要性

に改めて強く迫られる

ようになったのだった


9.11が発生したその背景には

アメリカの軍事力が

世界の平和を維持している

と自負する共和党政権に通有する

独善的な矜持があった


そこで冷戦が終結を迎えた後

テロとの戦いを標榜することにより

9.11の首謀者二名

をアフガニスタンの禿山に

追いつめておきながら

意図的に取り逃がすことで

イラク戦争へと突入するための

理由

を作り出すための陰謀を巡らし

アフガニスタン侵攻を含めて

十年に及ぶ中東での戦闘が

続くにようになったのだった


テロとの戦いだけでは

長期戦の理由としてはまことに不十分

そこで

大量破壊兵器の実戦配備をイラクが実施した

とするCIAからの情報を根拠に

多国籍軍の招集を再び行った

というところから

イラク戦争が始まった

その情報が虚偽であったとする事実が

その後発覚し

アメリカがその事実を認めたことで

イラク戦争に於けるアメリカの敗戦が

ついに確定する結果となったのである


中東を全般体に支配する重石

として機能していたイラクのフセイン政権を

アメリカが強引に民主化した

というそのことが

クルド人勢力と

地方軍閥双方の支えとなり

力による再支配を目論む勢力が

一斉に台頭し

ついにはイスラム国さえ

生み落す事態となった


イラク戦争がつづいていた間

テロ組織の陽動作戦として一般化していた

相次ぐ自爆テロによる攻撃が

宗派間の対立を亀裂へと変え

修復不可能な乖離をより一層深めた


これら一連のアメリカによる謀略と

テロ組織とによる反抗とが

世界的混迷を生む原点

となっただけでなく

増税抜きで戦費調達を図ったそのために

自然災害を理由とする原油相場の

長期的高騰を自ら演出し

国際経済全体に

エネルギーコストの上昇を強制

する結果を押し付けたそのことが

経済成長を長期間低迷させる

原動力となって人知れず

地球規模の作用と

反作用とを相次いで派生させたのだった


原油相場を高騰させたそのツケ

が過剰流動性の圧力となって反作用し

ドル余り現象を起源とする

信用経済の破綻

を意味するリーマンショックへと繋がった


イラク戦争を継続するための戦費調達を

原油相場の長期的高騰で賄っていたアメリカは

過剰供給したドルを回収する必要性に迫られ

資本の還流を目指して

その仕向け先を北米大陸へと絞り込み

サブプライムローン市場を債権化することで

過剰流動性の解消を目論んだ


これが2008年のドル余り現象による

リーマンショックへと繋がって

G20と呼ばれる新体制

が慌ててつくられた


現在注目の対象となっている北朝鮮の核

は未完成状態で頓挫したまま

の状況下で推移しており

地下核実験場となったその山塊は

自己崩落する結果と遭遇したことによって

膠着状態へと陥らざるを得なくなる

その重大な契機となった


核の脅威をアメリカに与えるつづけることは

これで不可能となってしまったのである

そのタイミングで北朝鮮包囲網

が一斉に敷かれたことから

金正恩体制は孤立したものの

冬季オリンピックの開催が

南北融和の機運を俄かに高めることとなり

アメリカに対する北の挑発に

鉾を納めさせるための

きっかけとなる偶然を与えたことから

対立姿勢の方向転換をするための

絶好の機会となった


このような偶発的というべき

個々の経過とその推移などが

膠着状態となっていた関係性

を改めるためのまたとないチャンス

となった


倖いは窮した後でやってくる


力による駆け引きというものは

力関係の確認を経た後に

一気呵成に安定化へと向かう

という通例をまたしても補強した


考えすぎて判断を誤ると

用意されていた落としどころ

を見失う

北朝鮮は既に方針を

不退転であるとして公表した

信頼関係を失っているにせよ

最早後戻りすることは

できない

またその気もなかろう


唐突に消失した抵抗するための理由を

外野が勝手に騒ぐことで

道を閉ざし

緊張を甦らせてしまうことほど

愚かなる展開は

他にない


情報分析能力が

健全なものであるのなら

アメリカは新たなる敵の創出

にほどなくして腐心する立場

へと追い詰められる


軍産複合体制が新たなる脅威

の導出に失敗しなければ

極東の米軍基地の延命は

可能

敵の創出に失敗すれば

米軍基地の存在理由は

一瞬で消え去る

北米大陸の失業率は

健全性を保っていることが

それ以降最早困難となり

国際経済をより一層

不安定化させることとなる

変化の波はこのようにして

想定の範囲を超えて

遠くの領域にまで

大きく波及する

予測不能な変化を

避けることは

誰にもできない
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