「素人」って何だ?における京王閣さんのコメントの中に、スキーの惨状の話が出ていたことに関連して。
思うに、公営競技の人気が衰退の兆しを見せ始めたのは、20代を中心とした若者が、スキーなどのアウトドアスポーツを志向するようになったから、という説もある。いわゆる、「レジャーの多様化」というやつ。
しかし、例えばスキーは現地へ行くだけでも遠い上に、諸々のカネがかかる・・・とかいう理由もあってか、今や一部のスキー場を除いて閑散、ひいては閉鎖を余儀なくされているところが後を絶たない様子。
もう一つ、日本国内におけるスキーのプレイブームにあやかって、「本物のスキー」を広めようと、マスコミがアルペンスキーのワールドカップを取り上げたことがあったが、はっきりいってこれが「大コケ」。つまりは、スキーは観るスポーツとして育たなかったために、次第にブームも消えてしまった、という見方もできなくはない。
今、自転車は「ピスト」の話を持ち出すまでもなく、老若男女問わず、都市部に行くと多くの愛好者がいる光景が見られる。また、自転車に関連する雑誌も、数数え切れないほど出ている。
ところが、「観る自転車」という観点からすると、これはかなり危機的な状況にあるといわざるを得ない。
自転車のいわゆる、「プレイ系雑誌」を出版している会社の中には、ロードレースを広めるべく、それにちなんだ内容の雑誌を発行しているところもあるようだが、とても売れているようには思えない。
また、以前にも話があったが、サイクルスポーツという雑誌は、それこそ自転車雑誌の老舗のような存在であるが、昔は「観るスポーツ」の記事も充実していて、ロードはもちろんのこと、6日間レースなども詳細に取り上げていたものである。
それが今や、ロードレースでさえ、ツールなどを除くと、数ページ程度割かれているだけ。さらにいえば、約20数年前に自転車競技マガジンが廃刊になって以降、日本には、競技面を重視した内容の雑誌は皆無同然になった。
それと、ま、未成年者が積極的に関与することができない背景もあってか、自転車雑誌に競輪が登場する機会がほとんどない。自転車競技マガジンでは競輪コーナーが設けられていたが、サイクルスポーツには昔からなかった。
ところが、やはり日本ではいまだ、自転車競技≒競輪なのである。よって、ロードレースの愛好家は競輪とワンセットにされるのを非常に嫌がるけど、日本国内で仮に自転車競技を観るスポーツとして広めようと思うのであれば、競輪への興味と知識は不可欠だ。
思えば、ツール・ド・フランスがなぜ1985年にNHKで取り上げられるようになったのか?それはひとえに、中野浩一の世界選Vロードの影響に尽きるだろう。中野の偉業がなければ、ツール・ド・フランスを取り上げたところで、視聴者に興味を示す内容にはなりえなかっただろうし。ところが、NHKが取り上げたことで、その中身は知られていなくとも、ツール・ド・フランスの名を知らない人はほとんどいなくなった、といっても過言ではない。
そして、橋本聖子が自転車でもオリンピックに出場することになり、自転車競技への興味は日本でもにわかに高まりつつあったが、橋本がソウルオリンピックで惨敗したことでそれに陰りが見られるようになり、ツール・ド・フランスもまた、NHKからフジテレビに放映権が移ったが、NHKとは少々違うコンセプトとなったことに嫌気が差された感が否めず、いつしか人気は下火となっていった。そして、競輪はというと、中野浩一が引退した年以降、入場も売上も下がりっぱなしだ。
思うに今、確かに自転車はプレイの側面から見ると大ブームとなっているが、自転車競技の側面から見ると、競輪の現状よろしく、風前の灯火状態から抜けきれない。ま、自転車はスキーとは違って、行くだけでカネがかかる、というものではないから、すぐには「プレーヤー」がいなくなり、やがて廃れるということはならなさそうだが、道交法の改正(歩道における自転車通行の規制)の兼ね合いもあり、またたく間に、ブームが去ってしまう可能性がある。
そうはさせてはならない、ということを業界自身が考えているのであれば、「観るスポーツ」としての自転車競技を広める必要性がある。ま、はっきりいって、日本はロードレースは期待できないので、必然的にトラックレースでオリンピック、世界選での活躍を期待したいところだが、今のところ、世界選でめぼしい活躍が見られない(ま、盛がスクラッチで3位に入ったことがあったが、オリンピック種目じゃない)ので、前途は険しいという他ないのだが・・・